2011年 ブラジル 日本語・ポルトガル語
原題 Dirty Hearts
ブラジルで実際にあった事件をもとに、戦争と人間、戦争の狂気といった普遍的なテーマを正面から扱ったヒューマンドラマ
第二次大戦終結後もなおブラジルの日系移民の中には日本が戦争に勝ったと信じ切っていた人々がいた
当時、ブラジルと日本は国交が絶たれていたため、日本に関する正確な情報を入手するのは極めて困難な状況だったのだ
サンパウロ州の小さな町で写真館を営む実直で寡黙な日本男児、タカハシ(伊原剛志)
妻、ミユキ(常盤貴子)とは心から愛し合っており、隣人のササキ(菅田俊)、ナオミ(余貴美子)夫妻や彼らの一人娘アケミ(セリーフ・フクモト)とも仲良く付き合っている
しかし、ブラジル政府による抑圧の下、日系人コミュニティでの集会や国旗掲揚は禁じられており、ミユキが近所の子供たちに日本の文化などを教えるのも夜、こっそりとしか出来なかったが、それなりに平穏な暮らしを続けていたタカハシたちに取り返しのつかない亀裂が生じつつあった
皇国日本は戦争に勝ったのだと強く信じて疑わない「勝ち組」
ポルトガル語のラジオ放送を聞いて日本敗戦の事実を認める「負け組」
「勝ち組」の精神的リーダー、元陸軍大佐ワタナベ(奥田映二)は大和魂の名のもと裏切り者の『粛清』として「負け組」の殺害を命ずる
その刺客に指名されたのがタカハシだった
彼は、血生臭い抗争の中で心身共に傷つき、妻ミユキとも引き裂かれていく
映画全体に色味が少ない中
タカハシに日本刀で切り付けられ白い綿花の山で息絶えたササキの流した赤い血が、まるで日章旗の白と赤のように目に焼き付きます
伊原剛志さんの個性を抑えた演技も良かったですが、夫が殺人者であることを知り悩み苦しむ常盤貴子さん、元軍人として粛清を扇動し周囲を戦争の狂気へ引きずり込む奥田映二さんのお二人の圧倒的な存在感が印象的でした
日本人監督による日本映画だと思っていましたが、監督は「良き人」でナチス台頭下のドイツで思いがけない選択を強いられる善良な市民を描いたヴィセンテ・アモリン
外国人監督でなければ描ききれなかった作品です
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