訳・平野暁人
岩波書店
2019年1月 第1刷発行
277頁
著者であり主人公のエドガーは5歳から14歳まで、1929年から1939年の約10年間をドイツ・ミュンヘンのヒトラーの家の向かいの建物で過ごしたのち、両親と共にイギリスへの亡命に成功
同地で高等教育を受け歴史学者となり現在も活躍されています
ユダヤ人であるエドガー一家はヒトラーの台頭に伴い次第に社会から正当なドイツ人として扱われなくなっていき、その根拠は「人種」という曖昧で不透明で非科学的なものでした
学校や街角、友人や先生との関係の中でそれまでのアイデンティティを一方的に踏みにじられ、存在自体を憎しみと侮蔑の対象として捏造されてゆくその過程を、大物編集者だった父、有名作家で反ナチスの急先鋒だった伯父、さらにその交遊関係にあった人々とのやりとりまで丁寧に記憶を辿って再現しています
各章の冒頭にヒトラー「我が闘争」からの引用文が掲載されていて、60~100文字前後の短い引用ながらその思想が読み取れ、空恐ろしさを感じます
これまで読んできたナチスドイツ関連の本や映画とは随分と違う風景が見えました
表紙カバーの絵はエドガーが8歳のとき(1933年)に学校で使っていたノートからのものです
複雑です…
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