小学館文庫
2012年1月 初版第1刷発行
傾きかけた設計事務所の所長が、40年前に故郷から東京へ出てきて下町の新聞販売店で住込み店員として働いた1年を振り返るお話で、著者の実体験がベースとなっています
受験浪人として東京にやってきた鳥海康男は、個室があって勉強ができるというY新聞店への就職を決める
個室とはいっても段ボールで仕切られた壁があるだけのまるで『鳥かご』のようなもの
それでも無いよりはマシ
早朝と夕方の仕事の合間には予備校に通えるし、勉強も出来る
二回寝返りをうったら壁にぶつかるような狭い鳥かごで寝起きしながら仕事に悪戦苦闘するもやがて東京での生活にも慣れてくる
同じように住込みで働く風変わりな販売店の仲間たち
配達先も一癖も二癖もあるような面々ばかり
昭和40年代、皆が必死に生きていて自分に生きる力を与えてくれたあの頃を懐かしく思い出し、今また新しく人生設計をたてなおそうと考える康男でした
本作は著者唯一の現代小説だそうです
直球ストレートで押しまくる青春譜
読後はいつもの如く爽快感に包まれます
著者への思い入れから贔屓目で見てしまったかしら(^_^;)
解説にかえ
亡くなる直前まで山形新聞に掲載されたエッセーから15本が収録されています
著者の小説に対する真摯な姿勢と人柄が偲ばれます
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