文藝春秋
2002年3月 第1刷発行
261頁
アパートにひとり暮らしの老作家の日常生活
老作家は久世さんご自身でしょうか
登場人物の中で最も重要なキャラクターである「弥勒さん」はカバー表紙のイラストからも内容からも樹木希林さんが連想されます
他の登場人物たちも実際に久世さんの周囲にいる方々なのかもしれません
弥勒さんというのが実に不思議な人物
一応、女優ということになっています
麻布あたりで娘夫婦と孫2人と暮らしていて
あの世とこの世を行き来するのはしょっちゅうで、たまにあの世の人間を連れてきたりするし、家族や老作家に異変が起こることを予知する力もあるらしい
数日留守にしていて帰宅すると
弥勒さんから送られてきた雛人形や多くの郵便物が郵便受けに入りきらず玄関ドアの前に積んであった
その中に一通の死亡通知があるのだが、その女性の名前には全く記憶がない老作家
すごいタイミングで電話をかけてきた弥勒さんは「思い出せないの?困ったわねえ」と言う
その女性は弥勒さんが湯葉を煮ていたら、沸騰したお湯の中から『通知は出したけど、きっと見ないで棄てられちゃうから、念の為』と語ったというのだ
弥勒さんから送られてきた雛人形をぼんやり眺めていてふと思い出される昔の出来事
次々甦る記憶の中に死亡通知の女性が浮かび上がってくるのだった
弥勒さんのところには老作家に因縁のある人が「やってくる」らしい
こんな感じのちょっと不思議な9つの連作短編集です
百先生っぽいところもあって、楽しみながらもなかなかに奥の深い一冊でした
少しずつですが久世さんの他の著書も読んでいきたいと思います
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