とある研究所(けんきゅうじょ)でのこと。所員(しょいん)が所長(しょちょう)に苦言(くげん)を呈(てい)していた。
「ほんとうにやるんですか? まだあの実験(じっけん)を行うにはデータが不足(ふそく)しています。考え直(なお)して下さい」
所長は口をとがらせて答えた。「何を言ってるのよ。あたし達が、今どういう状況(じょうきょう)なのか分かってるの? すぐに成果(せいか)を出さないと予算(よさん)が削(けず)られちゃうのよ」
「それは…、分かってます。分かってますけど、ちゃんとデータを集めなければ実験をやっても無意味(むいみ)です。もう少し待ってもらえませんか?」
「待てないの。…もう注文(ちゅうもん)しちゃったし…。だから、今すぐ実験をやるの!」
「しかし…、それは無茶(むちゃ)ですよ。今のままでは、実験が成功(せいこう)するとは思えません」
「別にいいわよ失敗(しっぱい)しても…。その時は、捏造(ねつぞう)でも何でもすればいいじゃない。予算が削られたら…、あたし困(こま)るの。だから、絶対(ぜったい)に成功させなさい!」
「やめて下さい。所長はこの研究所を潰(つぶ)すつもりですか? みんな知ってるんですよ。所長が予算の一部を私用(しよう)に使っているのを――」
「あたしがそんなことするはずないでしょ。バカなこと言わないで」
所長は開(ひら)き直って言い放(はな)った。「…訴(うった)えたかったら訴えなさいよ。そうなれば、あなた達も、今の研究が続けられないようにしてやるから。その覚悟(かくご)があるのかしら?」
<つぶやき>一番ダメなパターンじゃないですか…。こんなことしちゃいけませんからね。
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