しずくたちは家に戻(もど)っていた。目の前には千鶴(ちづる)がいて、ほっとした顔をして呟(つぶや)いた。
「あなた…、やっぱり救世主(きゅうせいしゅ)だったのね」
しずくはにこやかな顔をして千鶴に言った。「あなたが千鶴さんね」
しずくは手を伸(の)ばし、千鶴の手を握(にぎ)った。一瞬(いっしゅん)、千鶴は不快(ふかい)な顔になった。しずくは彼女の耳元(みみもと)にささやいた。「ごめんなさい。私、知りたいことがあって…」
しずくは手を離(はな)すとその場にへたり込んで、「あ~ぁ、お腹(なか)が空(す)きすぎてもう動けないわ。ねぇ、千鶴さん、何か食べさせてもらえませんか? お願いします」
千鶴はくすっと笑(わら)うと、「分かったわ。じゃあ、特製(とくせい)のカレーを作りましょう」
千鶴はそう言うとキッチンへ向かった。しずくは姉妹(しまい)を手招(てまね)きして言った。
「あなたたちの知りたいことを教えてあげるわ。千鶴さんは、ずっとあなたたちの味方(みかた)よ」
ハルが反論(はんろん)した。「あの人は、裏切(うらぎ)ったのよ。私たちの両親(りょうしん)も誰(だれ)かに裏切られて――」
しずくはハルの手を取って、「それは違(ちが)うわ。千鶴さんは、あなた達(たち)のお母さんから頼(たの)まれたことをしているだけ」
「頼まれたこと…?」アキが訊(き)き返した。「どういうこと?」
「あなたたちを守(まも)って欲(ほ)しいって…、そう言われてるの。だから――」
「でも…」ハルは納得(なっとく)できずに言った。「あの人たちと、つながってたじゃない。ここのことも知ってたし…。私たちを欺(だま)してたのよ」
<つぶやき>何かを守るためには、何かを犠牲(ぎせい)にしなければならない。難(むずか)しい決断(けつだん)だよね。
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