彼女はどこか淋(さび)しげな目をして言った。
「あたし、あなたの愛(あい)が見えないの。本当(ほんとう)に、あたしのこと愛してる?」
彼はちょっと困(こま)った顔をして答(こた)えた。「ごめん…。でも、僕(ぼく)たち昨日(きのう)初めて会って…。君(きみ)から告白(こくはく)されて、付き合い始めたから…。まだ君(きみ)のこと、よく…」
彼女は彼の言葉(ことば)をさえぎるように、「そんなのイヤよ。あたしは、あなたのこと愛してるって言ったのよ。あなたも、ちゃんと愛を見せてよ」
「えっ? 見せるって……?」
「ほら。こういうのとか…、こういうのもいいんじゃないかな…。こういうのもあるわよ」
彼女はいろんなポーズをとって彼に見せた。彼には、それが何なのかピンときてないようだ。彼女はだんだん不機嫌(ふきげん)になり、頬(ほお)を膨(ふく)らませて言った。
「あなた、ふざけてるの? あたしのこと、バカにしてるんでしょ」
「いや、そんなつもりはないよ。…あっ、分かった。踊(おど)りに行きたいってことだね」
「……何でよ。何で、これが踊りになっちゃうわけ? 信(しん)じられない…」
「でも…。えっ、違(ちが)うの? ごめん…。僕には、君が何を言いたいのか分からないよ」
「あなた、今まで女性と付き合ったことないの? 普通(ふつう)、分かるはずよ」
彼は首(くび)をかしげるばかり。彼女は大きなため息(いき)をついて、彼の腕(うで)をつかんで歩き出した。
「行くわよ。あたしが、どうすればいいのか教(おし)えてあげるわ」
<つぶやき>あんまり欲張(よくば)りすぎない方がいいですよ。ガツガツしてると嫌(きら)われちゃうぞ。
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