「赤旗」は解散・総選挙をめぐるNHK報道の問題点を指摘してきました(19日付、21日付)。解散の21日はどうか。特に午後1時台は、時間的にも内容でも「政権与党偏重」が際立ったものでした。
演説を2度放送
解散後、国会内からの生中継は民主・枝野幹事長のインタビューから始まりました。その直後、「さきほどから始まった自民党両院決起集会のもようをお伝えします」として、安倍首相の演説を3分間全部紹介。生中継に等しいものでした。その後、公明、維新とインタビューが続き、また自民党の谷垣幹事長が登場しました。これでは自民党に2枠与えたことになります。
中継はその後、次世代の党、日本共産党(山下書記局長)、社民党…と続きました。さらに同ニュースは、もう一度安倍首相の決起集会演説を丸まる流し、その後の野党は民主・海江田代表だけでした。
6時台のニュースも、解散にあたっての安倍首相会見をNHKだけが25分近く生中継しました。
解散・総選挙という国の進路にかかわる重大事での報道では、放送の精神を定めた放送法の順守が決定的に重要です。
同法1条は「放送を公共の福祉に適合するよう規律し」と定められ、「放送の不偏不党」を原則としています。4条はさらに「放送番組の編集」にあたって「政治的公平であること」と厳しく定めています。解散直後のNHK報道は明らかに「政治的公平」に反するものでした。
「争点隠し」加担、「与党への同調誘導」
さらに記者の解説もいろいろ問題を含んでいました。一つ例を挙げれば、「ニュース9」に登場した小池秀夫政治部長は、政策をめぐる与野党の状況について「長期的に見れば人口減や財政状況など、選択の幅は狭まっている。外交・安全保障でもそうだ」と発言しました。現実にはアベノミクスの評価ひとつとっても賛否両論がぶつかっています。日本共産党の政策をあげるまでもなく、消費税、原発、集団的自衛権…どれも、安倍内閣に対する「政策的争点」は明確です。
各党が政策を掲げてたたかう総選挙を前にして「政策選択の幅が狭い」と強調することは、政策の探求というメディアの責務の放棄です。さらには「争点隠し」への加担、ひいては「与党への同調誘導」とさえいえるものです。公示日を前に、NHKは放送法の原則に立ち返った報道が特に強く求められています。