鹿児島県は29日、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(薩摩川内市)で重大事故が起きた場合、30キロ圏内の住民が圏外へ避難するために必要な時間の試算を発表しました。要援護者については一切考慮されておらず、弱者置き去りの避難計画の実態が浮き彫りとなっています。
川内原発から30キロ圏内の約21万5千人(約9600世帯)が対象。各自治体が策定している避難計画に基づく経路に従い、対象者は全て車で避難するとし、条件を1台あたり乗り合わせ人数を2~4人にした場合、観光ピーク時、高速道路が通行できない場合など、13例を想定。最長で、5キロ圏内では16時間30分、30キロ圏内では28時間45分かかると予測しました。
30キロ圏内には240カ所の病院や福祉施設に、約1万4千人の対象者がいますが、県は、寝たきりや介護が必要な要援護者については「具体的な避難計画ができておらず想定ができない」などとして条件にすら入れていません。また、避難指示を待たずに住民が一斉避難した場合やスクリーニング検査にかかる時間も全く計算していません。
川内原発から30キロ圏内には、鹿児島市など9市町が入りますが、各自治体ごとの避難時間は出しておらず、県は「今後も推計する予定はない」としました。
まつざき真琴日本共産党県議は「要援護者や住民の安全を尊重したシミュレーションでなく、机上の計算だ。これでは住民の命を守れない」と指摘しました。
九州電力川内原発 鹿児島県西部の薩摩川内市にある原子力発電所。出力89万キロワットの加圧水型軽水炉が2基あり、1号機は1984年、2号機は85年に営業運転を開始しました。九電は出力159万キロワットの3号機の増設を計画していますが、東京電力福島第1原発事故を受け、事実上凍結されています