風評被害 東電が賠償
さいたま市のバス事業者が、福島第1原発事故による風評で利用者が大幅に減り、被害を受けたとして東京電力に損害賠償を請求していた問題で1日、東電が賠償に応じたことがわかりました。請求の窓口になって支援している埼玉県商工団体連合会(埼商連)が明らかにしたもの。福島原発事故の損害の範囲を示した「中間指針」の枠を超える内容で、損害賠償請求の取り組みを励ますものだとしています。
賠償を勝ち取ったのは茨城県や栃木県のゴルフ場へのバス送迎をしている男性経営者(67)です。事故後、風評で利用者が激減し、昨年4月、東電に対し約560万円の賠償を求めました。
しかし、東電は、ゴルフ場送迎は観光業ではなくサービス業だとし、サービス業の風評被害の対象を福島県内に限っている「中間指針」を盾に賠償を拒否しました。
男性は今年1月、原子力損害賠償紛争解決センターに申し入れました。同センターは、観光業かサービス業かにとらわれず、利用者の減少と原発事故との関係を認め、7月、請求額の9割の約500万円を東電が支払うとした和解案を提示しました。東電は当初、和解案も拒んでいましたが9月に受諾しました。
会見で、男性の弁護人の鴨田譲弁護士は「中間指針の基準を破る画期的な結果だ」と語り、埼商連の菊池大輔会長は「サービス業で一定の解決を見たことは全国の困った人たちの励みになる」と話しました。
埼商連の支援で損害賠償を勝ち取ったバス事業者は2人目です。