自販機「価格のジレンマ」
消費増税シフト…
1本200円の高単価品を投入
2013年5月3日(金)08:21
(フジサンケイビジネスアイ)
アサヒ飲料とキリンビバレッジの飲料大手2社が5月上旬から、
栄養成分が入った1本200円程度の
「エナジードリンク」を自動販売機で売り出し、販路の拡充を図る。
両社は急増する需要への対応を理由にしているが、
2014年4月に予定される
消費税率の引き上げに備えた戦略との見方も業界内ではくすぶる。
自販機での飲料販売は、
競争の激しさから単価の一律的な値上げがままならないのが現状。
このため単価の高い商品を取り入れることで
価格の硬直状態を崩し、
消費税増税に合わせた値上げを
スムーズに実現するのが隠れた狙いというわけだ。
「自販機ならオフィスビル内など身近なところでも購入できる。
自販機の売り上げアップにも貢献する商品だ」。
アサヒ飲料マーケティング本部の松橋裕介課長は
4月11日に都内で開いた発表会で、
エナジードリンク「モンスターエナジー」を
自販機で扱うメリットを強調した。
アサヒは12年5月、
米飲料メーカーのモンスタービバレッジから
モンスターブランドの日本での独占販売権を取得し、
この1年間で
当初計画の1.6倍に当たる160万ケース(1ケースは24本)を販売した。
ビタミンBや高麗ニンジンエキス、
カフェインなどを配合した従来品の特長を生かしながら、
糖質とカロリーをゼロに抑えた新商品を今月7日に投入。
同時に自販機での販売を展開し、
今年の販売目標240万ケースの達成を目指す。
ライバルのキリンもオーストリアの飲料メーカー、
レッドブルの日本法人とライセンス契約を結び、
エナジードリンク「レッドブル」を5月上旬から全国24万台の自販機で扱う。
世界での累計販売が46億本以上にのぼるとされる
高いブランド力をてこに「自販機での収益アップを狙う」(担当者)構えだ。
エナジードリンクは近年、
世界各国で売れている海外メーカー品の導入もあって、
国内での販売が拡大。
調査会社の富士経済によると、
12年は前年比2.2倍の267億円で、
13年は1.5倍の392億円が見込まれるなど、
久しぶりのヒット商品となっている。
「オロナミンC」(大塚製薬)など
栄養ドリンクと呼ばれる飲料の購買層は年齢の高い男性が中心なのに対し、
若年層にも人気があるなど購買層が広い。
主力の飲料商品より50円以上も価格が高く、
収益面での貢献度は大きい。
2社がエナジードリンクの自販機販売に乗り出すのは販売増だけでなく、
単価の高さが自販機の品ぞろえにメリハリを生み出すといった期待もある。
背景にあるのは、
自販機販売が抱える「価格のジレンマ」だ。
人件費を大幅に抑えられるとともに
商品を定価で販売できる自販機は粗利益率が高く、
飲料メーカーは利益全体の約6割を
自販機で稼ぎ出しているとされる。
日本自動販売機工業会によると、
12年の自販機による清涼飲料水の販売額は
前年比0.4%増の1兆9,022億円で、
飲料販売全体の約3~4割を占めた。
だがその半面、価格設定では柔軟性に欠ける。
3%の消費税が導入された1989年には缶飲料の価格を100円から110円に、
97年の税率5%への増税時には120円に値上げしたが、
安売りに踏み切ったスーパーでの購入に消費者がシフトした。
その後遺症は今も続き、
自販機での売上高は99年の2兆4,357億円をピークに減少傾向が続く。
消費税増税まで1年を切ったにもかかわらず、
スーパーとの価格競争が激しさを増す中、
自販機で扱う商品の値上げに向けた道筋はいまだに不透明だ。
グラフは販売実績の推移
エナジードリンクの自販機販売で足並みがそろったことを、
アサヒとキリンは「成長が続く市場でのブランドの確立が狙いで、
増税とは関係ない」とするが、
業界関係者からは「増税後の値上げをにらんだ布石に違いない」との声が上がる。
自販機で単価の高い商品を売る効果について調査会社、飲料総研の宮下和浩氏は
「消費増税前に消費者の値上がり感を緩和する効果がある」と指摘する。
その上で「例えば果汁100%の飲料と10%の飲料では原価が異なり、
一律値上げは合理的ではない。
増税後も商品ごとに10円単位で価格の設定を行う必要がある」と強調する。
自販機1台当たりの売上高や売れ筋商品などのデータを蓄積し、
収益性を分析するシステムをアサヒが今年導入するなど、
自販機の戦略をめぐる飲料各社の動きが活発化している。
価格のジレンマを解消し、
消費税増税後も自販機での収益を確保できるのか。
難題に答えを出すため、各社の試行錯誤が当面続きそうだ。
(西村利也)
http://news.goo.ne.jp/article/businessi/business/fbi20130502000.htmlより
この記事は、
火1の「マーケティング」の
関連資料としてお読みください。
消費増税シフト…
1本200円の高単価品を投入
2013年5月3日(金)08:21
(フジサンケイビジネスアイ)
アサヒ飲料とキリンビバレッジの飲料大手2社が5月上旬から、
栄養成分が入った1本200円程度の
「エナジードリンク」を自動販売機で売り出し、販路の拡充を図る。
両社は急増する需要への対応を理由にしているが、
2014年4月に予定される
消費税率の引き上げに備えた戦略との見方も業界内ではくすぶる。
自販機での飲料販売は、
競争の激しさから単価の一律的な値上げがままならないのが現状。
このため単価の高い商品を取り入れることで
価格の硬直状態を崩し、
消費税増税に合わせた値上げを
スムーズに実現するのが隠れた狙いというわけだ。
「自販機ならオフィスビル内など身近なところでも購入できる。
自販機の売り上げアップにも貢献する商品だ」。
アサヒ飲料マーケティング本部の松橋裕介課長は
4月11日に都内で開いた発表会で、
エナジードリンク「モンスターエナジー」を
自販機で扱うメリットを強調した。
アサヒは12年5月、
米飲料メーカーのモンスタービバレッジから
モンスターブランドの日本での独占販売権を取得し、
この1年間で
当初計画の1.6倍に当たる160万ケース(1ケースは24本)を販売した。
ビタミンBや高麗ニンジンエキス、
カフェインなどを配合した従来品の特長を生かしながら、
糖質とカロリーをゼロに抑えた新商品を今月7日に投入。
同時に自販機での販売を展開し、
今年の販売目標240万ケースの達成を目指す。
ライバルのキリンもオーストリアの飲料メーカー、
レッドブルの日本法人とライセンス契約を結び、
エナジードリンク「レッドブル」を5月上旬から全国24万台の自販機で扱う。
世界での累計販売が46億本以上にのぼるとされる
高いブランド力をてこに「自販機での収益アップを狙う」(担当者)構えだ。
エナジードリンクは近年、
世界各国で売れている海外メーカー品の導入もあって、
国内での販売が拡大。
調査会社の富士経済によると、
12年は前年比2.2倍の267億円で、
13年は1.5倍の392億円が見込まれるなど、
久しぶりのヒット商品となっている。
「オロナミンC」(大塚製薬)など
栄養ドリンクと呼ばれる飲料の購買層は年齢の高い男性が中心なのに対し、
若年層にも人気があるなど購買層が広い。
主力の飲料商品より50円以上も価格が高く、
収益面での貢献度は大きい。
2社がエナジードリンクの自販機販売に乗り出すのは販売増だけでなく、
単価の高さが自販機の品ぞろえにメリハリを生み出すといった期待もある。
背景にあるのは、
自販機販売が抱える「価格のジレンマ」だ。
人件費を大幅に抑えられるとともに
商品を定価で販売できる自販機は粗利益率が高く、
飲料メーカーは利益全体の約6割を
自販機で稼ぎ出しているとされる。
日本自動販売機工業会によると、
12年の自販機による清涼飲料水の販売額は
前年比0.4%増の1兆9,022億円で、
飲料販売全体の約3~4割を占めた。
だがその半面、価格設定では柔軟性に欠ける。
3%の消費税が導入された1989年には缶飲料の価格を100円から110円に、
97年の税率5%への増税時には120円に値上げしたが、
安売りに踏み切ったスーパーでの購入に消費者がシフトした。
その後遺症は今も続き、
自販機での売上高は99年の2兆4,357億円をピークに減少傾向が続く。
消費税増税まで1年を切ったにもかかわらず、
スーパーとの価格競争が激しさを増す中、
自販機で扱う商品の値上げに向けた道筋はいまだに不透明だ。
グラフは販売実績の推移
エナジードリンクの自販機販売で足並みがそろったことを、
アサヒとキリンは「成長が続く市場でのブランドの確立が狙いで、
増税とは関係ない」とするが、
業界関係者からは「増税後の値上げをにらんだ布石に違いない」との声が上がる。
自販機で単価の高い商品を売る効果について調査会社、飲料総研の宮下和浩氏は
「消費増税前に消費者の値上がり感を緩和する効果がある」と指摘する。
その上で「例えば果汁100%の飲料と10%の飲料では原価が異なり、
一律値上げは合理的ではない。
増税後も商品ごとに10円単位で価格の設定を行う必要がある」と強調する。
自販機1台当たりの売上高や売れ筋商品などのデータを蓄積し、
収益性を分析するシステムをアサヒが今年導入するなど、
自販機の戦略をめぐる飲料各社の動きが活発化している。
価格のジレンマを解消し、
消費税増税後も自販機での収益を確保できるのか。
難題に答えを出すため、各社の試行錯誤が当面続きそうだ。
(西村利也)
http://news.goo.ne.jp/article/businessi/business/fbi20130502000.htmlより
この記事は、
火1の「マーケティング」の
関連資料としてお読みください。