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企業価値の向上事例-Uアローズ社その2

2013年05月06日 22時05分24秒 | 学習支援・研究
前号の続き

以下、インタヴュー

―― 中期経営目標においてROE20%以上という目標を掲げていますが、
どのような背景から、このような高水準の目標設定を行っているのでしょうか。


私どもは、創業時より社会に開かれ透明性の高い
「株式上場企業」となることを目指していました。
そのため株式公開後は今日まで、
国内外の投資家に向けてIR活動を積極的に展開しています。
 
IR活動においては海外の機関投資家の方とお会いする機会も多いのですが、
ROEやIRR(内部収益率)など、
「資本効率性」に関してただされることが多々あります。
株式公開当初、私どもは企業価値を高めるために
「資本効率性」の視点を経営に取り入れていませんでしたが、
機関投資家の方とミーティングを重ねるうち、
そのような観点で経営を行うことが
「グローバルスタンダード」なのだと認識しました。
加えてグローバルな観点で投資先を検討する投資家にとって当社は
「アジアの一企業」に過ぎず、
他国、とりわけアジア地域の競合他社と
同列に比較・評価される存在であることも痛感しました。

私どもはグローバルな観点で
「認められる企業」になりたいと考えています。
そのためには資本効率性の視点をくみ入れて経営を実践する必要があり、
かつ、アジア地域の競合他社に引けを取らない水準の経営目標を掲げる必要があるとの認識が、
「ROE20%以上」という目標を掲げた背景にあります。
同時に「ROE20%」という水準は
自社の資本コストを上回るものですので、
当社の経営理念:
「株主価値の向上」も達成し得る水準であると認識しています。

―― 資本コストの概念をどのように経営に組み込んでいますか。

店舗の出店を含む新規投資を判断する際には、
そのプロジェクトごとにNPV(割引現在価値)や
IRRを算定していますが、
これらが資本コストを踏まえて設定される
「ハードルレート」を超えていることが
投資決定にあたっての必要要件となります。

また、このような方法で意思決定を行うことや、
経営目標に掲げるROEに関しては、
経営層やリーダーの間に共通認識を醸成するために
必要な教育プログラムを開催しています。

―― 2009年度にはROEが5.6%まで下落するなど(2012年度は29.2%)、
業績が低迷していた時期がありましたが、
これを乗り越え、
過去最高益を達成する水準まで業績回復を果たした「キーファクター」は
どのような要因であると考えていますか。



業績低迷期においては、
大きく2つの改革に取り組みました。
まず、1つ目の取り組みですが、
当社の経営理念に立ち戻り、
「お客様価値」の創造を強化することとしました。
具体的には本社機能を「スリム化」して意思決定スピードの迅速化を図るとともに、
店舗に配置する従業員数を増員して「現場力を強化」し、
お客様にきめ細かい接客が行えるような態勢を整備することとしました。

2つ目の取り組みは、
いわゆる「選択と集中」です。
当時私どもでは22のブランドを展開していたのですが、
全てのブランドが望ましい採算水準に達しているものではありませんでした。
そのため採算状況が望ましくないブランドについては撤退を図ることとし、
結果として10ブランドを撤退する決断を行いました。
なお、私どもでは
(i)3年間で単年黒字または
(ii)5年間で累損解消が見込まれない場合においては、
(i)または(ii)が「見込まれた」段階で原則、
事業撤退を行うという基準を設け、それを適用しています。

―― 業務運営において
企業価値の向上を図るための取り組みを行っていますか。


私どもでは原則、
ブランドごとに事業部を構成する組織体制としています。
そのため、特定ブランドの商品開発から販売に至るまで、
アウトレット店舗やウエブなどの販売チャネルを問わず、
事業部は特定ブランドの展開に関して
事業責任および収益責任を負う体制となっています。
これにより、事業部は販売チャネルを超えて販売戦術などを立案することができますし、
店頭でのお客様の「声」を商品開発などに反映しやすくしていると思います。

また、オペレーション上でも企業価値を高めるための取り組みを行っています。
当社では、経営目標を達成するために必要な業務ファクターを
「KPI」として定義しているのですが、
事業部・部門・店舗・従業員は各々、
それぞれのレベルでKPIを達成するために必要な目標を立案することとしています。
具体的には1年を52週単位に細分したMD(商品)計画を作成したうえで、
(i)店舗では販売員当たりの、
(ii)各事業部では部門や店舗ごとの、
(iii)本社は事業部門ごとの行動状況や
KPI達成状況などについてのモニタリングを最短、
週次単位で実施しています。
このように「PDCAサイクル」の実践を徹底することにより、
経営目標達成のために必要なアクションを速やかにとれるものと考えています。

―― 株主とのコミュニケーション・対話を行うことの重要性を
どのように考えていますか。


株主や投資家の皆様と対話を図ることは、
経営に新たな「気づき」をもたらしてくれるものと考えています。
冒頭申し上げましたように、
私どもは株主の方との対話を通じ、
資本効率に軸足を置いた経営を実践することができました。
このように当社では、
株主の皆様とのコミュニケーションを重視していますので、
決算説明会では私が株主の皆様に戦略や経営状況について直接説明し、
「スモールミーティング」にも参加しています。

ありがたいことに、
当社ブランドのお客様の方が当社の株主になっていただいているケースが多いのですが、
会社にお勤めの方でもご参加いただけるよう、
株主総会は夜間に開催することとしています。
また、決算説明会などの内容については、
ご参加いただけなかった株主や投資家の皆様に情報提供を行うため、
自社ウエブサイトに当日の議事録などを掲載するよう、情報公開に努めています。

―― 今後はどのような戦略をとり、
事業拡大を図ろうと考えていますか。


私どもが属するファッション業界はトレンドの変化も激しく、
継続性を担保するのはなかなか難しいのですが、
私は当社を「100年企業」にしたいと考えています。
そのためには将来の成長を見据え、
新規事業への取り組みを積極化することが重要であると考えています。

また、当社の経営理念に立ち戻ることになるのですが、
「お客様価値の向上」にさらなる磨きをかけたいと考えています。
そのために「O2O」戦略(オンライン トゥー オフライン)に注力したいと考えています。
当社のブランドをお買い求めいただくお客様の中には、
店舗で試着された後、購入のご検討をいただき、
ご自宅にて当社サイトにアクセスされ、
オンラインでお買い求めいただくというお客様もいらっしゃいます。
このようなお客様のために
当社では店舗のメンバーがお客様に「商品の品番」を書いたカードをお渡し、
オンラインで簡単にショッピングを行っていただけるような対応をとっています。
今後はさらに実店舗とオンラインの融合を図るような
施策に取り組んでいきたいと考えています。

以上、社長インタヴュー


上場会社表彰選定委員会より

2012年度に創設した上場会社表彰・企業価値向上表彰は、
関係者皆様のご協力をいただき、
表彰会社の選定及びシンポジウムの開催を終えることができました。
上場会社表彰選定委員会および株式会社東京証券取引所を代表いたしまして、
上場会社、投資者、後援者の皆様に改めて御礼申し上げます。

上場会社表彰については本年度(2013年度)以降も
継続して実施いたしますが、
関係者の皆様から頂いたフィードバックなどを活かし、
本年度表彰に係る選考方法などについて、
改善を図って参りたいと考えております。

2012年度の上場会社表彰に係る本ウエブサイトでの情報更新については、
今回の更新をもって終了することといたします。
昨年度(2012年度)は本表彰に係る情報発信を通じ、
「企業価値向上経営の重要性」を広く皆様に認知いただく
「礎」を築けたものと認識しておりますが、
本年度もこのムーブメントをさらに広められるよう、
情報発信を行って参りたいと考えています。
 本ウエブサイトをご覧いただいている皆様におかれましては、
引き続き上場会社表彰へのご協力を賜れますよう、お願い申し上げます。
上場会社表彰選定委員会 座長 伊藤邦雄
株式会社東京証券取引所 上場会社表彰選定委員会 事務局


http://ps.nikkei.co.jp/tseaward/0801.htmlより

コンビニのこれから

2013年05月06日 10時35分28秒 | 学習支援・研究
コンビニ出店ラッシュの陰で増える敗者
エコノミックニュース
2013年3月6日 13時25分
(2013年3月12日 19時35分 更新)

[拡大写真]
写真:コンビニ王セブン・イレブン

新政権の経済政策も順調なスタートをきり、
長年続くデフレ不況からの脱却に向けて
少し希望の光が差し込めてきたという見解も出始めているが、
小売業界を取り巻く環境は依然として厳しいことには変わりない。
先日は、大丸や松坂屋など展開する流通大手のJ.フロント・リテイリング<3086>が、
子会社となる食品スーパーの
ピーコックストアの株式全部をイオンに譲渡すると発表するなど、
業界内では再編が続いている。

そんな小売業界の中において、
勝ち組とされていたコンビニエンス業界だが、
スーパーやドラッグストアなどとの価格競争が激化したことで、
全国コンビニエンスストア全体での売上高は
既存店ベースでは8カ月連続で前年実績を下回っている
しかし、店舗数に関しては、新規出店ラッシュが続いており、
今年度のコンビニ大手5社の出店数は
合計で4,000店に上るとされている。

そんな中、コンビニ再大手のセブン-イレブン・ジャパン
(セブン&アイ・ホールディングス<3382> は、
今月(2013年3月)1日に香川県で8店舗、
徳島県に6店舗を新規出店した。
今回の14店舗の開店を足がかりに、
2014年には愛媛県内で、
また2016年には高知県でも店舗展開を開始する予定で、
今後6年間で四国全県において520まで店舗を増やす計画だという。
計画通りに進めば今後の6年間で四国では
先行するローソン<2651>やファミリーマート<8028>を出店数で追い抜くことになるため、
四国地域の勢力図にも大きな変化をもたらせることになるだろう。

「集中出店方式」と呼ばれるシステムを採用するセブン-イレブン・ジャパンでは、
たとえば弁当を製造する工場から
3時間以内に担当エリア内の店舗に配送が可能にならないなどの理由から
四国4県での店舗展開をしてこなかった。
今回、香川県と徳島県においては、
兵庫県と岡山県の製造・物流インフラを活用することで
店舗への効率的な配送が可能と判断し、
出店に踏み切ったようだ。
今年の12月には、
両県にオリジナル商品を作る工場が稼働を開始する予定で
集中的に出店を進めていく方針だという。

昨年、国内のコンビニエンスストアの数は5万店を突破し、
その後も増え続けている。
最近では、既に競合店が多く飽和状態となっている都市圏を避け、
出店費用が抑えることができる
地方の小さな町の国道沿いなどに
大型の駐車場を完備した店舗を出店する傾向にあるようだ。
しかし、出店ラッシュでまだまだ勢いがあるように見えるコンビにエンスストア業界だが、
その陰では、想定どおりの集客が得られなかったり、
ライバルとの競争に敗れ、
店を閉めてしまうというケースも増えているという事実もある。

セブン-イレブンのように
新たな消費を掘り起こそうと好調なプライベートブランドなどを武器に
出店を強化するという攻めのスタンスをみせるコンビニもあれば、
逆にローソンのように地域ごとに店作りを見直したいと新規出店を
例年より抑える方向に舵を取り始めたコンビニもあるなど、
大手においてもその戦略は様々だ。
今や我々の生活にとって欠かせない存在となっているコンビニストアが
どんどん増えていくことは、
消費者にとっては益々便利になるが、
その一方で、コンビニ間の競争が激化し、
さらに多くの敗北を生み出してしまうリスクもあるだろう。

(編集担当:帯津冨佐雄)

http://www.excite.co.jp/News/product/20130306/Economic_10910.htmlより

コンビニの数も落ち着きをみせ、
再編が進んでいるように感じていたが、
他の地域では、さらに新規の出店が加速しているようだ。
地方都市では、コンビニの閉鎖が多くあり、
空き店舗や業態替えをよく目にする。
わたしの近くのコンビニは、撤退後「理髪店」になった。

Appleコンピュータの今後

2013年05月06日 08時22分49秒 | 学習支援・研究
崩れた“アップル神話” 
財務見直しで株主還元

2013年5月5日(日)11:04
(産経新聞)

4月30日、ウォール街が驚いた。
米IT大手のアップルが、
事業会社としては史上最大規模、
170億ドル(約1兆6,500億円)の社債発行に踏み切ったのだ。
アップルが保有する現金など手元流動性は約391億ドル。
これはライバルである米PC大手ヒューレット・パッカードをポンと買収できるほどの水準である。
ただでさえ現金が豊富にあるのに、
なぜ無借金経営の看板を下ろす必要があるのだろうか?

答えは株主を意識した財務政策の大転換だ。
アップルが4月23日に発表した1~3月期決算は、
ほぼ10年ぶりの減益。
昨年9月に最高値705ドルをつけた株価は
4月に385ドルまで低下する場面があり、
この半年間、アップル株はウォール街で最も人気のない銘柄の一つだった。


チャート:10年間のアップルの業績

株主の怒りを鎮めようと、
アップルは決算発表と同時に今後2年間で
1千億ドル相当の自社株買いと増配を発表。
ため込んだ現預金の多くは米国外で寝かしており
米国に送金すると税金がかかる
これも社債発行が必要な理由だ。

アップルは低金利に目をつけて
資本コストを引き下げる財務ギアリング(てこ入れ)を狙った。
原則として、将来の売り上げと財務戦略は関係ないので、
企業価値が一定だとすると
負債側の借金(社債)が増えると金利支払い分は税務控除されるうえ、
借入金利が低まる分だけ株式の利回りが上がる(てこ入れ効果)。
需給面でも、借り入れた分だけ自社株買いするので結果的に株価が上がる

一般に、ギアリングはリスクの高い初期投資が一巡して、
収益が安定し始めた企業が取る財務政策である。
対照的にアマゾン・ドットコムや
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェイスブックは
無配当経営で、
稼いだ現金は株主還元よりも
システムや設備投資に資金使途を優先する方針を続けている。
つまり、アップルの新しい財務政策は
企業として次の段階、「成熟化」に移った証拠といえる。

アップルはブランドとマーケティング力で知られるが、
「消費者のインターフェース(接点)を抑えた垂直統合」という
川上のコンテンツから川下の端末までのバリューチェーン(価値連鎖)を、
一気通貫で押さえた経営モデルが成功の本質
だった。

スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット(高機能携帯端末)などを開発して、
消費者が接する端末分野の新市場を作り、
音楽配信のアイチューンなどを経て、
コンテンツ利用に際してはアップルストアを経由させてデータを蓄積した。
基本ソフトやブラウザーもアップル製なので端末の動作はスムーズで使いやすい。

こうした強みが頂点に達したのが、
2011年に亡くなった創業者でCEO(最高経営責任者)だった
スティーブ・ジョブズ氏が高機能端末「iPad」を発表した10年1月。
そのころの株価は200ドル前後。
以来、端末の競争が激化し、
目玉だった商品開発も途絶え、
11年初めには売上高成長率、
同半ばにはマージン率が下降に向かう。

アップルにとって不幸だったのは、
欧州危機などで仕込む銘柄がなかったヘッジファンドが
頭打ちしたアップルを無理に買いあさり、
「世間をアッと言わせる商品を作り続ける」という成長神話を延命させた点だ。
アップル株は昨年まで、
ヘッジファンド業界ではダントツで組み入れ銘柄ナンバーワンだった。

だが、昨秋に最高値をつけた前後に起きた、
地図のアプリケーション・ソフトでのバグや
顧客サービスの不手際で
中国勢から批判されるなどの経営ミスをきっかけに「神話バブル」が弾ける。

足元では、テレビ、時計、
廉価なスマートフォンなど新商品開発がうわさされているが、
一度剥がれ落ちた成長期待を立て直すのは難しい。
4月の決算発表を機に、
英バークレイズは14年の利益予想を2割も下方修正した。

年初には米投資会社グリーンライト・キャピタル率いる
デイビッド・アインホーン氏が配当の高い優先株を発行しやすくするようにアップルを訴えた。
一株主に訴えられるのは、アップルが「普通の会社」になった証しである。

とはいえ、アップルの神話崩壊は、
米国の資本市場にとっては明るいニュースとして解釈できる。
故ジョブズ氏の後を継いだティム・クックCEOは、
今回の決算で株主還元策を決めなければ、
取締役会で突き上げを受けるのが必至だった。
天下のアップルとはいえ、
市場の圧力で経営効率が改善される企業統治機能が働いていたのだ。
(ニューヨーク駐在編集委員・松浦肇)

http://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/snk20130505508.htmlより