前号の続き
以下、インタヴュー
―― 中期経営目標においてROE20%以上という目標を掲げていますが、
どのような背景から、このような高水準の目標設定を行っているのでしょうか。
私どもは、創業時より社会に開かれ透明性の高い
「株式上場企業」となることを目指していました。
そのため株式公開後は今日まで、
国内外の投資家に向けてIR活動を積極的に展開しています。
IR活動においては海外の機関投資家の方とお会いする機会も多いのですが、
ROEやIRR(内部収益率)など、
「資本効率性」に関してただされることが多々あります。
株式公開当初、私どもは企業価値を高めるために
「資本効率性」の視点を経営に取り入れていませんでしたが、
機関投資家の方とミーティングを重ねるうち、
そのような観点で経営を行うことが
「グローバルスタンダード」なのだと認識しました。
加えてグローバルな観点で投資先を検討する投資家にとって当社は
「アジアの一企業」に過ぎず、
他国、とりわけアジア地域の競合他社と
同列に比較・評価される存在であることも痛感しました。
私どもはグローバルな観点で
「認められる企業」になりたいと考えています。
そのためには資本効率性の視点をくみ入れて経営を実践する必要があり、
かつ、アジア地域の競合他社に引けを取らない水準の経営目標を掲げる必要があるとの認識が、
「ROE20%以上」という目標を掲げた背景にあります。
同時に「ROE20%」という水準は
自社の資本コストを上回るものですので、
当社の経営理念:
「株主価値の向上」も達成し得る水準であると認識しています。
―― 資本コストの概念をどのように経営に組み込んでいますか。
店舗の出店を含む新規投資を判断する際には、
そのプロジェクトごとにNPV(割引現在価値)や
IRRを算定していますが、
これらが資本コストを踏まえて設定される
「ハードルレート」を超えていることが
投資決定にあたっての必要要件となります。
また、このような方法で意思決定を行うことや、
経営目標に掲げるROEに関しては、
経営層やリーダーの間に共通認識を醸成するために
必要な教育プログラムを開催しています。
―― 2009年度にはROEが5.6%まで下落するなど(2012年度は29.2%)、
業績が低迷していた時期がありましたが、
これを乗り越え、
過去最高益を達成する水準まで業績回復を果たした「キーファクター」は
どのような要因であると考えていますか。
業績低迷期においては、
大きく2つの改革に取り組みました。
まず、1つ目の取り組みですが、
当社の経営理念に立ち戻り、
「お客様価値」の創造を強化することとしました。
具体的には本社機能を「スリム化」して意思決定スピードの迅速化を図るとともに、
店舗に配置する従業員数を増員して「現場力を強化」し、
お客様にきめ細かい接客が行えるような態勢を整備することとしました。
2つ目の取り組みは、
いわゆる「選択と集中」です。
当時私どもでは22のブランドを展開していたのですが、
全てのブランドが望ましい採算水準に達しているものではありませんでした。
そのため採算状況が望ましくないブランドについては撤退を図ることとし、
結果として10ブランドを撤退する決断を行いました。
なお、私どもでは
(i)3年間で単年黒字または
(ii)5年間で累損解消が見込まれない場合においては、
(i)または(ii)が「見込まれた」段階で原則、
事業撤退を行うという基準を設け、それを適用しています。
―― 業務運営において
企業価値の向上を図るための取り組みを行っていますか。
私どもでは原則、
ブランドごとに事業部を構成する組織体制としています。
そのため、特定ブランドの商品開発から販売に至るまで、
アウトレット店舗やウエブなどの販売チャネルを問わず、
事業部は特定ブランドの展開に関して
事業責任および収益責任を負う体制となっています。
これにより、事業部は販売チャネルを超えて販売戦術などを立案することができますし、
店頭でのお客様の「声」を商品開発などに反映しやすくしていると思います。
また、オペレーション上でも企業価値を高めるための取り組みを行っています。
当社では、経営目標を達成するために必要な業務ファクターを
「KPI」として定義しているのですが、
事業部・部門・店舗・従業員は各々、
それぞれのレベルでKPIを達成するために必要な目標を立案することとしています。
具体的には1年を52週単位に細分したMD(商品)計画を作成したうえで、
(i)店舗では販売員当たりの、
(ii)各事業部では部門や店舗ごとの、
(iii)本社は事業部門ごとの行動状況や
KPI達成状況などについてのモニタリングを最短、
週次単位で実施しています。
このように「PDCAサイクル」の実践を徹底することにより、
経営目標達成のために必要なアクションを速やかにとれるものと考えています。
―― 株主とのコミュニケーション・対話を行うことの重要性を
どのように考えていますか。
株主や投資家の皆様と対話を図ることは、
経営に新たな「気づき」をもたらしてくれるものと考えています。
冒頭申し上げましたように、
私どもは株主の方との対話を通じ、
資本効率に軸足を置いた経営を実践することができました。
このように当社では、
株主の皆様とのコミュニケーションを重視していますので、
決算説明会では私が株主の皆様に戦略や経営状況について直接説明し、
「スモールミーティング」にも参加しています。
ありがたいことに、
当社ブランドのお客様の方が当社の株主になっていただいているケースが多いのですが、
会社にお勤めの方でもご参加いただけるよう、
株主総会は夜間に開催することとしています。
また、決算説明会などの内容については、
ご参加いただけなかった株主や投資家の皆様に情報提供を行うため、
自社ウエブサイトに当日の議事録などを掲載するよう、情報公開に努めています。
―― 今後はどのような戦略をとり、
事業拡大を図ろうと考えていますか。
私どもが属するファッション業界はトレンドの変化も激しく、
継続性を担保するのはなかなか難しいのですが、
私は当社を「100年企業」にしたいと考えています。
そのためには将来の成長を見据え、
新規事業への取り組みを積極化することが重要であると考えています。
また、当社の経営理念に立ち戻ることになるのですが、
「お客様価値の向上」にさらなる磨きをかけたいと考えています。
そのために「O2O」戦略(オンライン トゥー オフライン)に注力したいと考えています。
当社のブランドをお買い求めいただくお客様の中には、
店舗で試着された後、購入のご検討をいただき、
ご自宅にて当社サイトにアクセスされ、
オンラインでお買い求めいただくというお客様もいらっしゃいます。
このようなお客様のために
当社では店舗のメンバーがお客様に「商品の品番」を書いたカードをお渡し、
オンラインで簡単にショッピングを行っていただけるような対応をとっています。
今後はさらに実店舗とオンラインの融合を図るような
施策に取り組んでいきたいと考えています。
以上、社長インタヴュー
上場会社表彰選定委員会より
2012年度に創設した上場会社表彰・企業価値向上表彰は、
関係者皆様のご協力をいただき、
表彰会社の選定及びシンポジウムの開催を終えることができました。
上場会社表彰選定委員会および株式会社東京証券取引所を代表いたしまして、
上場会社、投資者、後援者の皆様に改めて御礼申し上げます。
上場会社表彰については本年度(2013年度)以降も
継続して実施いたしますが、
関係者の皆様から頂いたフィードバックなどを活かし、
本年度表彰に係る選考方法などについて、
改善を図って参りたいと考えております。
2012年度の上場会社表彰に係る本ウエブサイトでの情報更新については、
今回の更新をもって終了することといたします。
昨年度(2012年度)は本表彰に係る情報発信を通じ、
「企業価値向上経営の重要性」を広く皆様に認知いただく
「礎」を築けたものと認識しておりますが、
本年度もこのムーブメントをさらに広められるよう、
情報発信を行って参りたいと考えています。
本ウエブサイトをご覧いただいている皆様におかれましては、
引き続き上場会社表彰へのご協力を賜れますよう、お願い申し上げます。
上場会社表彰選定委員会 座長 伊藤邦雄
株式会社東京証券取引所 上場会社表彰選定委員会 事務局
http://ps.nikkei.co.jp/tseaward/0801.htmlより
以下、インタヴュー
―― 中期経営目標においてROE20%以上という目標を掲げていますが、
どのような背景から、このような高水準の目標設定を行っているのでしょうか。
私どもは、創業時より社会に開かれ透明性の高い
「株式上場企業」となることを目指していました。
そのため株式公開後は今日まで、
国内外の投資家に向けてIR活動を積極的に展開しています。
IR活動においては海外の機関投資家の方とお会いする機会も多いのですが、
ROEやIRR(内部収益率)など、
「資本効率性」に関してただされることが多々あります。
株式公開当初、私どもは企業価値を高めるために
「資本効率性」の視点を経営に取り入れていませんでしたが、
機関投資家の方とミーティングを重ねるうち、
そのような観点で経営を行うことが
「グローバルスタンダード」なのだと認識しました。
加えてグローバルな観点で投資先を検討する投資家にとって当社は
「アジアの一企業」に過ぎず、
他国、とりわけアジア地域の競合他社と
同列に比較・評価される存在であることも痛感しました。
私どもはグローバルな観点で
「認められる企業」になりたいと考えています。
そのためには資本効率性の視点をくみ入れて経営を実践する必要があり、
かつ、アジア地域の競合他社に引けを取らない水準の経営目標を掲げる必要があるとの認識が、
「ROE20%以上」という目標を掲げた背景にあります。
同時に「ROE20%」という水準は
自社の資本コストを上回るものですので、
当社の経営理念:
「株主価値の向上」も達成し得る水準であると認識しています。
―― 資本コストの概念をどのように経営に組み込んでいますか。
店舗の出店を含む新規投資を判断する際には、
そのプロジェクトごとにNPV(割引現在価値)や
IRRを算定していますが、
これらが資本コストを踏まえて設定される
「ハードルレート」を超えていることが
投資決定にあたっての必要要件となります。
また、このような方法で意思決定を行うことや、
経営目標に掲げるROEに関しては、
経営層やリーダーの間に共通認識を醸成するために
必要な教育プログラムを開催しています。
―― 2009年度にはROEが5.6%まで下落するなど(2012年度は29.2%)、
業績が低迷していた時期がありましたが、
これを乗り越え、
過去最高益を達成する水準まで業績回復を果たした「キーファクター」は
どのような要因であると考えていますか。
業績低迷期においては、
大きく2つの改革に取り組みました。
まず、1つ目の取り組みですが、
当社の経営理念に立ち戻り、
「お客様価値」の創造を強化することとしました。
具体的には本社機能を「スリム化」して意思決定スピードの迅速化を図るとともに、
店舗に配置する従業員数を増員して「現場力を強化」し、
お客様にきめ細かい接客が行えるような態勢を整備することとしました。
2つ目の取り組みは、
いわゆる「選択と集中」です。
当時私どもでは22のブランドを展開していたのですが、
全てのブランドが望ましい採算水準に達しているものではありませんでした。
そのため採算状況が望ましくないブランドについては撤退を図ることとし、
結果として10ブランドを撤退する決断を行いました。
なお、私どもでは
(i)3年間で単年黒字または
(ii)5年間で累損解消が見込まれない場合においては、
(i)または(ii)が「見込まれた」段階で原則、
事業撤退を行うという基準を設け、それを適用しています。
―― 業務運営において
企業価値の向上を図るための取り組みを行っていますか。
私どもでは原則、
ブランドごとに事業部を構成する組織体制としています。
そのため、特定ブランドの商品開発から販売に至るまで、
アウトレット店舗やウエブなどの販売チャネルを問わず、
事業部は特定ブランドの展開に関して
事業責任および収益責任を負う体制となっています。
これにより、事業部は販売チャネルを超えて販売戦術などを立案することができますし、
店頭でのお客様の「声」を商品開発などに反映しやすくしていると思います。
また、オペレーション上でも企業価値を高めるための取り組みを行っています。
当社では、経営目標を達成するために必要な業務ファクターを
「KPI」として定義しているのですが、
事業部・部門・店舗・従業員は各々、
それぞれのレベルでKPIを達成するために必要な目標を立案することとしています。
具体的には1年を52週単位に細分したMD(商品)計画を作成したうえで、
(i)店舗では販売員当たりの、
(ii)各事業部では部門や店舗ごとの、
(iii)本社は事業部門ごとの行動状況や
KPI達成状況などについてのモニタリングを最短、
週次単位で実施しています。
このように「PDCAサイクル」の実践を徹底することにより、
経営目標達成のために必要なアクションを速やかにとれるものと考えています。
―― 株主とのコミュニケーション・対話を行うことの重要性を
どのように考えていますか。
株主や投資家の皆様と対話を図ることは、
経営に新たな「気づき」をもたらしてくれるものと考えています。
冒頭申し上げましたように、
私どもは株主の方との対話を通じ、
資本効率に軸足を置いた経営を実践することができました。
このように当社では、
株主の皆様とのコミュニケーションを重視していますので、
決算説明会では私が株主の皆様に戦略や経営状況について直接説明し、
「スモールミーティング」にも参加しています。
ありがたいことに、
当社ブランドのお客様の方が当社の株主になっていただいているケースが多いのですが、
会社にお勤めの方でもご参加いただけるよう、
株主総会は夜間に開催することとしています。
また、決算説明会などの内容については、
ご参加いただけなかった株主や投資家の皆様に情報提供を行うため、
自社ウエブサイトに当日の議事録などを掲載するよう、情報公開に努めています。
―― 今後はどのような戦略をとり、
事業拡大を図ろうと考えていますか。
私どもが属するファッション業界はトレンドの変化も激しく、
継続性を担保するのはなかなか難しいのですが、
私は当社を「100年企業」にしたいと考えています。
そのためには将来の成長を見据え、
新規事業への取り組みを積極化することが重要であると考えています。
また、当社の経営理念に立ち戻ることになるのですが、
「お客様価値の向上」にさらなる磨きをかけたいと考えています。
そのために「O2O」戦略(オンライン トゥー オフライン)に注力したいと考えています。
当社のブランドをお買い求めいただくお客様の中には、
店舗で試着された後、購入のご検討をいただき、
ご自宅にて当社サイトにアクセスされ、
オンラインでお買い求めいただくというお客様もいらっしゃいます。
このようなお客様のために
当社では店舗のメンバーがお客様に「商品の品番」を書いたカードをお渡し、
オンラインで簡単にショッピングを行っていただけるような対応をとっています。
今後はさらに実店舗とオンラインの融合を図るような
施策に取り組んでいきたいと考えています。
以上、社長インタヴュー
上場会社表彰選定委員会より
2012年度に創設した上場会社表彰・企業価値向上表彰は、
関係者皆様のご協力をいただき、
表彰会社の選定及びシンポジウムの開催を終えることができました。
上場会社表彰選定委員会および株式会社東京証券取引所を代表いたしまして、
上場会社、投資者、後援者の皆様に改めて御礼申し上げます。
上場会社表彰については本年度(2013年度)以降も
継続して実施いたしますが、
関係者の皆様から頂いたフィードバックなどを活かし、
本年度表彰に係る選考方法などについて、
改善を図って参りたいと考えております。
2012年度の上場会社表彰に係る本ウエブサイトでの情報更新については、
今回の更新をもって終了することといたします。
昨年度(2012年度)は本表彰に係る情報発信を通じ、
「企業価値向上経営の重要性」を広く皆様に認知いただく
「礎」を築けたものと認識しておりますが、
本年度もこのムーブメントをさらに広められるよう、
情報発信を行って参りたいと考えています。
本ウエブサイトをご覧いただいている皆様におかれましては、
引き続き上場会社表彰へのご協力を賜れますよう、お願い申し上げます。
上場会社表彰選定委員会 座長 伊藤邦雄
株式会社東京証券取引所 上場会社表彰選定委員会 事務局
http://ps.nikkei.co.jp/tseaward/0801.htmlより