・・・ 悲しみは小夜鳴鳥のように鳴きながら飛んでゆく。
・・・ 明るい世界の上を・・・
・・・ 「誰の後を追いかけようか?」
(バラード7 「悲しみ」より。)
トーダルがソロ活動としてはセカンドアルバムだけど、「トーダル&WZ-オルキエストラ」の名前で発表した初めてのアルバム。
19曲収録の中で、2曲はベラルーシ民謡をアレンジしたもの。そのほかは、古いベラルーシの詩に民謡風の曲をつけている。
タイトルどおり耳に心地よいバラードが多いのですが、19曲のうち10曲はそれぞれ1分ぐらいしかないインストゥルメンタルで、実質的には9曲のバラードが収録されている。
(トーダルって、曲の曲の間に何か入れるのが好きだよな。)
トーダルが以前参加していたグループ「パラーツ」や「クリヴィ」がしている音楽と同じジャンルである。つまり、ベラルーシ民謡を自分風にアレンジするという手法だが、パラーツと同じアレンジの仕方はしていない。パラーツほど、ロックでゴージャスな感じはなく、楽器もバイオリンとバヤンが主体で、素朴な編曲は、ベラルーシ民謡らしさをたくさん残している。
クリヴィ時代にしたかったけど、できなかったアレンジなんですこれが、というトーダルのメッセージもここに出ている、と言える。
ベラルーシの民謡の古い持ち味を多く残しているため、
「ああ、ベラルーシだなあ・・・」
と聴いていて感じることができる。
CDジャケットのデザインは地味だけど、ベラルーシの伝統文化である切り紙細工がモチーフになっていて、あくまでベラルーシ色にこだわっています
ベラルーシらしさを感じたい日本人には一番お勧めのCD。アルバムタイトルどおり、哀愁漂うせつない曲が多い。
トーダルが発表した数々のアルバムの中で、マーサが3番目に好きなアルバム。やっぱり、ベラルーシらしいから、外国人には心惹かれるものがあるね。
ただ・・・
日本語に訳された歌詞を読んだらびっくりするかも・・・
日本人の感覚からすると、
「昔のベラルーシ人は何考えてたのか?!」
と思うような不思議な歌詞がいっぱい。シュールです。
どうしてこんな風な変った歌詞が多いのかと言うと、ベラルーシ人は、駄洒落が好きで(正しくは音韻を踏むのが好き)言葉遊びが得意だからです。
話の流れとしては、おかしくなっても気にせずに、どんどん駄洒落になる言葉を繋げていってしまいます。それをベラルーシ語歌うと、「韻を踏んでいて美しい歌。」とベラルーシ人は感じるのだけど、日本語に訳すと言葉の美しさが分からなくなってしまい、意味だけ訳したのを読むと、「?」な歌になってしまうことが多いです。
そしてタイトルはその歌の一番最初の言葉がそのままタイトルになることが多い。で、その言葉から別の言葉が生まれ、そこからまた別の言葉が生まれ・・・と連想ゲームのように繋がっていき、歌の最後には全然、歌のタイトルと違う話になっていたりします。(例 バラード9の「緑の樫の木」など。樫の木がコサックになって、いつの間にか魚のカワカマスになってしまう。)
それと、ベラルーシ民謡の歌詞の特徴は、会話が多いこと。登場人物たちが、あるいは人間が自然と普通に会話しており、その会話の中身が、そのまま歌詞になっていることが多い。しかも会話が突然始まったりする。
馬の番をしていたはずの女の子、カーシャがいきなりなぞなぞに答えないといけなくなったりする。(「カーシャは馬の番をした」バラード2)
しかも、なぞなぞに答えられても、答えられなくても罰ゲーム(のようなもの)が待っているとは、どういうことなのか・・・。
摩訶不思議なベラルーシ民謡の歌詞の世界に行ってみたい人は、ぜひこのアルバムをお聴きください。
(まあ、日本の民謡でも「ソーラン節」のソーランって何? と外国人にきかれると、普通、すらすら説明できないよなあ・・・)
それにロシア民謡は日本語に訳されているけど、ベラルーシ民謡はほとんど翻訳されていないので、そういう視点での興味のある方もぜひ、お聴きください。
・・・・・・・・
「バラード」 ベラルーシ民族詩、ベラルーシ民謡
1.秋
2.白樺を切らないで (バラード1)
3.叫ぶ
4.カーシャは馬の番をした (バラード2)
5.東
6.棺 (バラード3)
7.西
8.お伽噺 (バラード4)
9.君はどこに?
10.息子のダニーラ (バラード5・ベラルーシ民謡)
11.ヤーシカ
12.美しいダロータ (バラード6)
13.棺
14.悲しみ (バラード7)
15.空気
16.鶴 (バラード8)
17.盛土
18.緑の樫の木 (バラード9・ベラルーシ民謡)
19.叫ぶ
・・・・・・
少し説明すると・・・「11.ヤーシカ」のヤーシカは男性名。
「17.盛土」というのは、昔ベラルーシで一軒家の周りに、風を防ぐために盛り上げられた土のことです。土塁のようなものでしょうか。これで、冬の間、風が家に直接吹き付けるのを防いでいましたが、夏場はその上に座って、おしゃべりをしたり、民謡を歌ったりする、憩いの場でもありました。
収録曲のうち、マーサが特に好きなのは「2.白樺を切らないで」「8.お伽噺」「14.悲しみ」です。
「8.お伽噺」はヤマタノオロチみたいな話でおもしろいです。
「14.悲しみ」は、曲はベラルーシ民謡なのに、歌詞が(駄洒落歌詞に比べるとわれわれ、現代日本人にも分かりやすく)普遍的で、とてもいいです。この歌に出てくる「彼女」というのは名前などは出てきませんが、「一般的な若い女性」をさしています。
確かにシュールですね・・・ベラルーシ民謡の世界。これは少々意外だった。
(CD「バラード」はただ今、Vesna!で発売中。全曲日本語対訳付きです。)
・・・ 明るい世界の上を・・・
・・・ 「誰の後を追いかけようか?」
(バラード7 「悲しみ」より。)
トーダルがソロ活動としてはセカンドアルバムだけど、「トーダル&WZ-オルキエストラ」の名前で発表した初めてのアルバム。
19曲収録の中で、2曲はベラルーシ民謡をアレンジしたもの。そのほかは、古いベラルーシの詩に民謡風の曲をつけている。
タイトルどおり耳に心地よいバラードが多いのですが、19曲のうち10曲はそれぞれ1分ぐらいしかないインストゥルメンタルで、実質的には9曲のバラードが収録されている。
(トーダルって、曲の曲の間に何か入れるのが好きだよな。)
トーダルが以前参加していたグループ「パラーツ」や「クリヴィ」がしている音楽と同じジャンルである。つまり、ベラルーシ民謡を自分風にアレンジするという手法だが、パラーツと同じアレンジの仕方はしていない。パラーツほど、ロックでゴージャスな感じはなく、楽器もバイオリンとバヤンが主体で、素朴な編曲は、ベラルーシ民謡らしさをたくさん残している。
クリヴィ時代にしたかったけど、できなかったアレンジなんですこれが、というトーダルのメッセージもここに出ている、と言える。
ベラルーシの民謡の古い持ち味を多く残しているため、
「ああ、ベラルーシだなあ・・・」
と聴いていて感じることができる。
CDジャケットのデザインは地味だけど、ベラルーシの伝統文化である切り紙細工がモチーフになっていて、あくまでベラルーシ色にこだわっています
ベラルーシらしさを感じたい日本人には一番お勧めのCD。アルバムタイトルどおり、哀愁漂うせつない曲が多い。
トーダルが発表した数々のアルバムの中で、マーサが3番目に好きなアルバム。やっぱり、ベラルーシらしいから、外国人には心惹かれるものがあるね。
ただ・・・
日本語に訳された歌詞を読んだらびっくりするかも・・・
日本人の感覚からすると、
「昔のベラルーシ人は何考えてたのか?!」
と思うような不思議な歌詞がいっぱい。シュールです。
どうしてこんな風な変った歌詞が多いのかと言うと、ベラルーシ人は、駄洒落が好きで(正しくは音韻を踏むのが好き)言葉遊びが得意だからです。
話の流れとしては、おかしくなっても気にせずに、どんどん駄洒落になる言葉を繋げていってしまいます。それをベラルーシ語歌うと、「韻を踏んでいて美しい歌。」とベラルーシ人は感じるのだけど、日本語に訳すと言葉の美しさが分からなくなってしまい、意味だけ訳したのを読むと、「?」な歌になってしまうことが多いです。
そしてタイトルはその歌の一番最初の言葉がそのままタイトルになることが多い。で、その言葉から別の言葉が生まれ、そこからまた別の言葉が生まれ・・・と連想ゲームのように繋がっていき、歌の最後には全然、歌のタイトルと違う話になっていたりします。(例 バラード9の「緑の樫の木」など。樫の木がコサックになって、いつの間にか魚のカワカマスになってしまう。)
それと、ベラルーシ民謡の歌詞の特徴は、会話が多いこと。登場人物たちが、あるいは人間が自然と普通に会話しており、その会話の中身が、そのまま歌詞になっていることが多い。しかも会話が突然始まったりする。
馬の番をしていたはずの女の子、カーシャがいきなりなぞなぞに答えないといけなくなったりする。(「カーシャは馬の番をした」バラード2)
しかも、なぞなぞに答えられても、答えられなくても罰ゲーム(のようなもの)が待っているとは、どういうことなのか・・・。
摩訶不思議なベラルーシ民謡の歌詞の世界に行ってみたい人は、ぜひこのアルバムをお聴きください。
(まあ、日本の民謡でも「ソーラン節」のソーランって何? と外国人にきかれると、普通、すらすら説明できないよなあ・・・)
それにロシア民謡は日本語に訳されているけど、ベラルーシ民謡はほとんど翻訳されていないので、そういう視点での興味のある方もぜひ、お聴きください。
・・・・・・・・
「バラード」 ベラルーシ民族詩、ベラルーシ民謡
1.秋
2.白樺を切らないで (バラード1)
3.叫ぶ
4.カーシャは馬の番をした (バラード2)
5.東
6.棺 (バラード3)
7.西
8.お伽噺 (バラード4)
9.君はどこに?
10.息子のダニーラ (バラード5・ベラルーシ民謡)
11.ヤーシカ
12.美しいダロータ (バラード6)
13.棺
14.悲しみ (バラード7)
15.空気
16.鶴 (バラード8)
17.盛土
18.緑の樫の木 (バラード9・ベラルーシ民謡)
19.叫ぶ
・・・・・・
少し説明すると・・・「11.ヤーシカ」のヤーシカは男性名。
「17.盛土」というのは、昔ベラルーシで一軒家の周りに、風を防ぐために盛り上げられた土のことです。土塁のようなものでしょうか。これで、冬の間、風が家に直接吹き付けるのを防いでいましたが、夏場はその上に座って、おしゃべりをしたり、民謡を歌ったりする、憩いの場でもありました。
収録曲のうち、マーサが特に好きなのは「2.白樺を切らないで」「8.お伽噺」「14.悲しみ」です。
「8.お伽噺」はヤマタノオロチみたいな話でおもしろいです。
「14.悲しみ」は、曲はベラルーシ民謡なのに、歌詞が(駄洒落歌詞に比べるとわれわれ、現代日本人にも分かりやすく)普遍的で、とてもいいです。この歌に出てくる「彼女」というのは名前などは出てきませんが、「一般的な若い女性」をさしています。
確かにシュールですね・・・ベラルーシ民謡の世界。これは少々意外だった。
(CD「バラード」はただ今、Vesna!で発売中。全曲日本語対訳付きです。)