みつばちマーサのベラルーシ音楽ブログ

ベラルーシ音楽について紹介します!

「LIRYKA」(2007年)

2008年02月15日 | トーダル
・・・ せめて空の極みに
    歌声も音も捨ててしまおう
    濡れそぼつナナカマドの木立
    実の先は赤く光っている・・・
    雨は降り続ける
    でも、それがどうした?
    秋を不安がらせておこう・・・

       (「8.雨は降り続ける」より。)

・・・・・・・・

 2007年12月にトーダル&WZ-オルキエストラが発表したアルバム。
 ちなみに発売記念コンサートの様子はトーダルの公式ブログで見られます。

http://generation.by/doc14-115.html


 まずアルバムタイトルの「LIRYKA」って何だ? と思われるので、説明します。
 LIRYKAというのは、ベラルーシ語で「Лірыка」 日本語に訳すと「抒情詩」のことです。ちなみに「リルィカ」と発音します。
 これはベラルーシの詩人ゲナジ・ブラウキンが書いた作品、つまり抒情詩に、トーダルが作曲したものです。
 抒情詩、というだけあって、歌詞の内容はとても美しい。ベラルーシへ行って、しかも田舎の一軒家の窓辺に座って、花が咲いているのや、鳥が飛んでいるのや、雨が降ったり、星が光っているのを眺めているような気がしてきます。
 しかし!
 やっぱり一筋縄ではいかないトーダルなのであった。
 そういう美しい世界をですね、彼はロックの曲をつけて、シャウトしてしまいました。
 ブラウキンさん、最初このアルバムを聞いたとき、びっくりしただろうなあ・・・。
 日本で言うと、60歳代の自然を詠う大御所歌人のところへ、30歳代のミュージシャンがある日突然やってきて、
「あなたが作った短歌に作曲したいんですが。」
と言い出し、ああ、いいですよ、と返事したら、いきなりロックにされていた・・・という感じでしょうか。

 リルィカ・・・なんて美しい響きの言葉をアルバムタイトルにしていますが、わざわざ英語転記して「LIRYKA」にしたのも、そういうニュアンスを表現したかったからでしょう。
 マーサはいつもベラルーシ語音楽のアルバムタイトルを日本語に訳すとき、とても悩むんだけど、今回もだいぶ考えましたね。
「抒情詩」とか「リルィカ」とかジャケットデザインが目玉(^^;)だから「君の瞳」とかにしようかと考えたんだけど、結局、オリジナルタイトルをそのまま残しました。
 日本人からすると分かりにくいかもしれませんが、やっぱり、「LIRYKA」という言葉がこのアルバムの内容をよく表現していると思います。

 さて、トーダルは1999年に「ロック・カラナツィヤ」コンクールで「ベラルーシ最優秀ロックシンガー男性ボーカリスト部門」で優勝しており、これに優勝すると「ロック・キング」の称号(^^;)が与えられます。でも、ちゃんと王冠を授与しています。
 ちなみに「ベラルーシ最優秀ロックシンガー女性ボーカリスト部門」で優勝すると、「ロック・クイーン」の称号と王冠がもらえますが、1999年は当時同じグループ「クリヴィ」のメンバーだったベラニカがもらっています。

 というわけで、今回久しぶりにロック・キング時代のトーダルに戻って、このアルバムで熱唱しているわけです。
 しかし、もともとの歌詞は美しいし、トーダルの声が声楽で鍛えたバリトンなので、いくらシャウトしていても、何だか、きれいなロックに聴こえますね。

 ロック、ロックと紹介しましたが、実際には全曲ロック調の作品ではありません。
 1曲目はいきなり、ブラウキンさんが、自分の詩を自ら朗読しているのが収録されています。(全14曲収録、と言うことになっているけど、実際には13曲収録されている。)
 初めて聞いたとき、びっくりするかもしれないけど、ちゃんと楽曲も収録されていますので、ご安心を。
 ブラウキンさんが朗読している詩「私たちの歌」は、なぞなぞみたいで、意味深です。分かる人には答えはすぐ分かりますが。

 ロックの作品は実は「2.最大の力」「4.広い愛」「6.風が葉を揺らす」「8.雨は降り続ける」の4曲だけなのです。
 しかし、どの曲もいいです。非常にいいです。
 トーダル、めちゃくちゃかっこいいです。(「6.風が葉を揺らす」はちょっと笑ってしまった・・・。)
 歌詞は「8.雨は降り続ける」が特にいいですね。
 しかしまあ、「オモチャヤサン」に出てくる動物を除くと、今回初めて、トーダル作品の歌詞に出てくる人称を「俺」と「お前」で訳してみました。(「4.広い愛」)
 いつもは「僕」と「君」なんだけどねえ。

・・・・・・・

LIRYKA  作詞 ゲナジ・ブラウキン

1.私たちの歌 (朗読 ゲナジ・ブラウキン)
2.最大の力
3.僕のことを思い出したかい?
4.広い愛
5.隣の女
6.風が葉を揺らす
7.ボートで川を逆上った
8.雨は降り続ける
9.月は黄色いボート
10.すてきな夢
11.君の瞳
12.ナイチンゲール
13.君の優しさ
14.新年前夜

・・・・・・・

 ロック以外の作品についても、それぞれご紹介すると・・・
「3.僕のことを思い出したかい?」
 とてもきれいなバラード。今回収録の作品にはどうも「孤独感」「男女の間の距離感」があちこちに感じられて、少々悲しい空気が漂っている。しかし、悲しがってばかりもいられないので、トーダルはロックもしているんだろうな。

「7.ボートで川を逆上った」「11.君の瞳」
 両方とも歌詞が、めちゃくちゃ後ろ向き。「7.ボートで川を逆上った」は曲調もしんみりしているが、「11.君の瞳」は歌詞はひどく後ろ向きなのに、曲はやたら明るい。ノリがいいので、よくコンサートでトーダルも歌っているけど、普通、こういう歌詞にこういう曲はつけない。

「5.隣の女」
 トーダルがウラジーミル・ヴィソツキーのように歌っている。しかし曲は3拍子で、歌詞は牧歌的。しかしその内容は完全に「隣の男の妄想」(^^;)
 そんなに隣に住んでいる女の人が気になるんなら、今すぐ「こんちは。隣に住んでいる者ですが。」と家に会いに行けばいいのに・・・と思った。

「9.月は黄色いボート」
 ロマンチックなベラルーシの農村の愛の世界。ベラルーシの田舎へ行ったら、こういう情景があちこちでありそう。私にも誰か、花輪を作ってくれい。(^^;)

「10.すてきな夢」
 曲調は「NHKみんなのうた」に採用されそうなかわいらしさなのに、歌詞の内容はずばり「ベラルーシの若い女の子の妄想」(^^;)
 しかも、トーダル、歌いながらそういう女の子たちのことを実は馬鹿にしてるだろう! とつっこみを入れたくなる。そんなに馬鹿笑いしないで、女の子にも夢を見させてくれよう・・・(^^;)
 注釈を加えると、「ラジビル一族」というのは、中世、ベラルーシ地域を治めていた貴族のことです。
 詳しくはHP「ベラルーシの部屋」のネスヴィシュをご覧ください。

http://belapakoi.s1.xrea.com/gh/city/nesvish/index.html


「12.ナイチンゲール」 すごくおかしくて、かわいくて、悲しくて、なかなか終わらなくて、しかもかっこいい曲。ある意味、このアルバムの代表作だと思う。

「13.君の優しさ」 トーダルが初めて作った「アフリカ風」の曲、だそうです。歌よりも間奏のところでトーダルがしゃべっているほうがずっと長いという作品。明るくてかわいらしい、楽しい曲だが、歌詞はやっぱり「ちょい寂しい」世界を描いている。

「14.新年前夜」 お正月の歌。しかし、歌詞も曲も、「明日は正月、めでたいな。」という雰囲気ではない。
 注釈を加えると、「ゴリゾントとビチャジのテレビ」というのは、どちらもベラルーシ製のテレビのこと。
 ゴリゾントはミンスクに、ビチャジはビテプスクにあるテレビを製造している、ベラルーシでは有名な企業である。
 ちなみにゴリゾントは地平線、ビチャジは騎士、という意味である。

 うーん、ずいぶんたくさん書いてしまった。
 ロックしているトーダルを聴きたい人には、一番お勧めのCDです。

(全曲日本語対訳付きで、ただいまVesna!で発売中!)


トーダルのブログで「日本のお土産アンケート」してます

2008年02月15日 | トーダル
 トーダルが自分の公式ブログで、日本公演のことを書き込んでいます。
 で、「もし日本に行ったら、どんなものを持って帰りたい?」と質問しています。自分のお土産選びの参考にしたいのであろうか・・・
 この質問に対するベラルーシ人からのコメントは、いろいろ。

「桜の花の枝」
「扇子」
「俳句集 短歌集」
「お酒」
「お金」
「海苔」
「お茶」
「日本の太陽」
「海岸で拾った小石」
「自分を持って帰るのを忘れるな。」
「日本人の女の子」
「鞍馬山」(←こりゃすごい。どうやってベラルーシまで持って帰るんだろ。)

 ベラルーシ人の頭の中はどうなっているのか。これだから好きだな、ベラルーシ人。

「ソ連軍の日(2月23日)に日本でコンサート?! こりゃおもしろい。」という意見もあり。仕方ないよ、偶然土曜日だったんだから、今年は。

書き込まれたコメントに対するトーダルの返事。
「わあ、大きいトランク買わなきゃ。」
 それに対する友達からのコメント。
「私のトランク貸してあげる。」
 その人からのコメント。
「お土産に『日本』って書いてあるマグカップちょうだい。何か日本の絵がデザインされているのでもいい。冷蔵庫にくっつけるマグネットでもいい。」

 みんなかわいいよねえ。(^^)