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著者が昭和38年(1963年)に生まれた旧土橋(現川崎市で、渋谷から東急田園都市線で30分)は当時50世帯だったが、今ではなんと7,000世帯もの高級住宅街となっているという。
このように高度経済成長の中、著者は近代化で「何か大切なものを置き忘れてきたような気がする…」と思っているとき、土蔵で見つけた「一枚の護符」からビデオカメラで古老の話や伝統行事を撮り始め、2008年に映画「オオカミの護符-里びとと山びとのあわいに」と本書が上梓(2011年初版)されたという。
土蔵の護符は東京青梅市にある「武蔵御嶽神社」の護符と分かり、講中を通じての神社との関わりを調べ、更に関東一円とりわけ秩父地方のオオカミ信仰について興味深い聞き書きが載せられている。
明治維新でも先の敗戦でも失われなかったものが、今は近代化の波で失われていく中、このような地道な調査はとても貴重に思える。素晴らしい本だった。