著者が、1980年1月にカンボジアの野戦病院で出会った難民チョムリス・ウン(当時14歳)から17枚のクレヨン画をもらった。それは彼が見たポルポト軍による虐殺の様子がリアルに描かれていた。
2年後、彼ら家族がアメリカのミネソタ州のレイクビル市に住んでいることが分かり、84年8月に通訳の細川美智子さん(ポルポト時代に奇跡的に生き延びた日本人二人の内の一人)を伴って渡米し、彼から当時の模様を聞き取りする。そして翌月、カンボジアに行き彼の足跡を訪ねる。彼の証言のルートを再訪してその様子をルポしている。本書では彼の証言とルポを13編ほど掲載している。
国民の4分の一が虐殺されたとも云われるポルポト軍の蛮行が、生々しく迫ってくる。スターリン、ヒトラー、毛沢東などをあげるまでもなく、政治権力の乱用は恐ろしい。ワイマール憲法をいつの間にかナチス憲法に変えた手法を真似ればいい、と言った御仁がいる政権を戴く国民の行く末はどうなのだろうか。