幕末から明治初めにかけて、開国の交渉や政府の招聘で日本を訪れた外国人が多くいた。帰国後日本の印象や、記録を残し人も数多い。本書から任意にあげてみると、チェンバレン「日本事物詩」、「ウエストンの明治見聞記」、クロウ「日本内陸紀行」、ハリス「日本滞在記」等、きりがないといえるほど多い。
著者は九州に住む在野の思想家(解説591ページ)で、これらを読破して(章の終わりに全て引用のページを掲げている)外国人が見た当時の日本の風物習慣・気質・生活態度などをまとめているのが本書である。
氏は、当時の文明は一つの完成の域に達したものだったとしている。その構成員の親和と幸福感、与えられた生を無欲に楽しむ気楽さと諦念、自然環境と日月を年中行事として生活化する仕組みにおいて、異邦人を賛嘆へと誘わずにはいない文明であった(568ページ)。しかしこの文明も世界資本主義によって命数を終えるのは必然だったと説く。
文章も平易でとても読みやすく、読んでいて楽しい(但し600ページ近くもある)。
当時の大人や子どもの幸福感に満ちた姿を想像すると、科学技術の進歩が本当に人間を幸福にするのか怪しくなる。確かに便利ではあるが、原発事故は言うまでもなく過労死やいじめ自殺「日本死ね」の保育所問題等悩ましい。一国主義が拡がりそうなのもどうかと思う。近頃進んだと言われる富の偏在も気になる。