新・きものの基

絹や木綿、麻など素材から染織の歴史、技法、デザイン、そしてきものと暮らしの多様な関係までを紹介します!

藍染③

2007-07-08 17:16:56 | ゆかた・藍染

■藍染・叺(かます)

写真は、蒅(すくも)が入っている「叺(かます)」。叺は、稲藁で作った袋で、通気性があり、こうやって天井近くの湿気のない場所に置いておけば、すくもを長く保存できる。社長の大澤さんのはなしでは「すくもは、むしろ寝かした方が発色がよくなる」とのことで、その年にできたすくもを直ぐに使うわけではないそうです。

蛙印染織工芸の社長・大澤さんは昭和63年に名古屋の徳川美術館に収蔵されていた「家康公の藍染小袖」の復元プロジェクトにも参加した藍染の第一人者。NHKでも「ジャパン・ブルー/青の文化と家康小袖の再現」というタイトルで放送され、本も出ているのでご記憶の方もいるかもしれませんが、「400年も前に染め、実際に家康公が袖を通した藍染の辻が花の小袖を見たとき、身が震えましたね。まるで昨日染めたかのように、しっかりした色調で、確かな輝きをもった藍の温かさがあった」と語る大澤さん。当時の話をするとまた思いが甦るのか、少し興奮気味。しかし蛙さんは博識な方で、あちらこちら飛びながら、興味深い話を聞かせてくれ、またその話が面白い。しかし、このままでは話だけで終わってしまいそうなので、藍甕のある染め場に移動。

ふと壁を見ると神棚の脇に紙の振袖が祀ってある。聞くと「紺姫さま」というそうで、昔から藍の染め場にはある守り本尊。裾が藍色に染まっているのは、毎年正月、初染めの時に良い藍が染まりますようにと祈りつつ染め、奉納するのだそうですが、「今年は、紺姫さまを染めなかったな…」と蛙さんはポツリ。昔は、紺姫さまが焼餅を焼くからと、女性は藍甕のある染め場には上がれなかったそうですが、いまは女性もOK。

大澤さんのとこは、長板中形で、糊を伏せた布を藍甕に浸して染める「表紺屋(おもてこんや)」ですが、糸を染める紺屋は「綛紺屋(かせこんや)、糸紺屋」というのだそうです。蛙さんのところは、藍甕が32個。大規模な表紺屋で「江戸の色を守ろうと」親子2代で、日々藍染めに挑戦しているそうです。

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