ホットケーキは母の味

ストレスがたまると、無性に作りたくなるのが
ホットケーキ。
母が唯一作れるお菓子の類で、友達が来ると
種を作ってみんなで焼かせてくれたものだった。

長年かけて私のオリジナルレシピに変わった
自分を癒す自分の料理。
水分はすべて豆乳。そうするといつまでもやわらかい。

小麦粉は国産の中力粉だし、砂糖はキビ砂糖なので
ホットケーキはきれいな黄色にはならない。
なんとなくくすんだ肌色。見かけはあまりよくないけれど

子供たちがとてもお世話になった個人塾へみんなの
差し入れにして、と小さな形にしてたくさんタッパーに
入れて持たせた時、おいしいととっても喜んで
「これ、全部もらっていい？」
と子供のように独り占めしたというお年寄りの塾長先生。
そのことを報告する子供たちの楽しそうな笑顔や、先生の
エピソード、うれしかった思いがいつまでも心に残っている。

今年突然亡くなられて・・・こんなことならもっと
何枚も、何回も焼いて差し上げればよかった。

焼きながらいつも思い出して、名前を呼ぶ。
子供たちを本当にかわいがってくださった先生。

自分の力で誰かを幸せにしたり、喜んでもらったり
することが子供のころからの夢だった。
非力な幼い自分が嫌で、早くなんでも自分で出来る
ようになりたかった・・・
それが出来ている喜びと、もうできない寂しさを
感じながら娘と食べるおやつ。