MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯1636 日常生活への復帰と経済回復

2020年06月04日 | 社会・経済


 新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が、ほぼひと月半ぶりに全国で解除されました。

 日本全体で見れば、感染拡大当初に懸念されていたパンデミックの発生を何とか免れ、日本における新型ウイルス肺炎の流行は(少なくとも一旦は)収まりつつあるように見えます。

 新型コロナウイルスの感染拡大の防止と社会経済活動の「両立」を目指す政府の「基本的対処方針」も定められ、いよいよ日本も経済活動の再開に向けた新しい段階を迎えようとしています。

 さはさりとて、安倍晋三首相も5月25日の会見で触れたように、感染防止と経済活動の回復について「両立させていくことは極めて難しいチャレンジ」であるのは言うまでもありません。

 まずは、困窮する家計や企業を資金面で支えるとともに、経済活動の再開とうアクセルと行動制限というブレーキを上手に使い分けながら、じっくり腰を据えた対応をとっていく必要があるということでしょう。

 5月21日の日本経済新聞は「日常生活復帰、課題忘れるな」と題する論評記事を掲げ、コロナウイルスの第2波、第3波を避けつつ経済をV字回復に導くために注力すべきポイントを整理しています。

 瞬く間に世界中に広がった新型コロナウイルスの感染は、欧米先進国と一部新興国で今も猛威を振るっている。

 そうした中、これまでに亡くなった人の8割以上が欧米先進国で、そこにロシア、ブラジル、インドの3大新興国を加えると全体の9割を占めており、アジア太平洋諸国の感染率と死亡率の低さが際立つというのが記事の認識です。

 移民比率の高さや医療体制などとも関係があると考えられているが、こうした中で日本は何とか自粛政策でオーバーシュートを防ぐことに成功した。死亡率が欧米先進国の約50分の1にとどまったことは、ある意味注目に値すると記事は(日本の対応を)評価しています。

 感染症が広がり始めてから約5カ月。過去に例を見ない世界一斉の出入国規制と非常事態宣言発動で感染拡大にブレーキをかけてきたが、ここに来てようや勢いが弱まり社会活動を再開する国が増え始めた。

 迅速かつ巨額な財政・金融対策で金融市場の安定を維持してきた世界経済にとって、これからの各国の課題は感染第2波を抑えつつ経済活動をいかに再開するかになるというのが記事の見解です。

 日本は高い民度に支えられ(辛うじて)第1波を切り抜けたが、次の波を迎えるに当たっては、テレワークなど社会システムのオンライン化の遅れを取り戻すことが必要だと記事は指摘しています。

 今から約40年前、ベストセラーとなった「第三の波」の著者のアルビン・トフラー氏が、在宅勤務時代の到来を熱く語っていたことを思いだすと筆者は言います。今こそ次世代通信規格「5G」を活用して一気に社会インフラを整備するときだということです。

 また、感染症対策の抜本的拡充と医療体制強化も急務だと筆者はこの記事に記しています。

 社会と健康を支えるインフラ投資は強力な景気対策にもなる。ウイルス感染の次の波に備えた防衛体制を、経済再開のカギとして重点的に進める必要があるということです。

 さらに、行動制限下における長丁場の闘いに耐えるには、雇用対策や家賃補助、学費減免などに加えて、人々の心のケアも必要だと筆者は説明しています。

 社会的距離を保てば人間関係はどうしても希薄になる。そのような中で豊かな人間性を育むには文化・芸術振興が欠かせない。海外に見劣りしない文化支援も必要だし、コロナ問題で懸念される米中関係の悪化を防ぐ外交努力も必要だというのが筆者の認識です。

 しかし、そこで一つ留意しなければならないのは、補正予算と税収減で国債発行が当初予算の倍以上に膨張することだと、筆者はこの記事で指摘しています。

 財政悪化への懸念を踏まえれば、日常生活を取り戻した暁には財政再建計画の作成に着手することも忘れてはならない。景気は今が大底で、緊急事態宣言解除で経済活動が再開すると同時に景気は徐々に浮上するだろうということです。

 補正予算の執行開始も追い風となり、景気回復の兆しはいずれ見えて来ると記事は見ています。しかし、それはあくまで兆しであって、日常生活が戻らない限り景気は元には戻らないというのが記事の指摘するところです。

 世界が協力し合いながら新型コロナウイルスを封じ込め、ポストコロナの新しい経済社会の姿を描いていかなければならない。

 少なくとも、そうした国際社会の姿を思い描ける形で、ぜひとも来年の東京オリンピックを皆で祝いたいものだとこの記事を結ぶ筆者の願いを、私も共感を持って受け止めたところです。


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