総務省が実施した2021年の「家計調査」によれば、34歳以下の世帯の「平均貯蓄率」(使えるお金のうち貯蓄に回す割合)は39.0%で、世帯全体の34.2%に比べておよそ5ポイント高くなっているとのこと。また、可処分所得のうち実際に消費に回す割合を示す「消費性向」も、34歳以下の世帯では54.7%と、世帯全体の62.8%に対し約8ポイントも下回っているということです。
例え手元にお金があったとしても、使おうとしない若者たち。その背景には、成長を知らないこの世代には常に将来の不安が付きまとっていることや、情報が溢れたこの時代、ネット世代である彼らがコスパやタイパ合わない無駄な出費を嫌うことなどがあるのでしょう。
しかし、既に還暦を超えた私自身が感じるのは、その時は多少「もったいないな」と思っても、やれる時にやれることをやっておいたほうが良いということ。長い長いと感じていた人生は、じつは案外あっけないものだと知って、初めてわかる(そうした)感覚というものもあるのかもしれません。
年の瀬に当たりそんなことを考えていたところ、ブックライターの上阪徹(うえさか・とおる)氏が12月28日の経済情報サイト「DIAMOND ONLINE」(『「不幸な老後」を送る人が直面する“想像と違う”老後のリアル』)において、全世界で20万部を超えるベストセラーとなった『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著)の一部を紹介していたので、参考までに小欄にその概要を残しておきたいと思います。
安心できる老後のためにも「貯蓄は早くから始めたほうがいい」とアドバイスされている若い人も少なくないだろう。親に言われて、子どもの頃からお小遣いを貯めてきた人も多いかもしれない。しかし、若いときは節約よりも、自由に金を使うほうが合理的だという考えを支持する経済学者は多いと上阪氏はこの記事に綴っています。
氏によれば、若い時分は節約よりもむしろ金を借りるくらいでちょうどいい。何十年もあとの暮らしのために、今の君が金を惜しんで貯蓄に勤しむのはバカげているとパーキンス氏は著書で語っているということです。
以下、その理由を紹介すると、まずは「今しかできない経験」というものがあるということ。貯蓄も大事かもしれないが、そのために貴重なチャンスをみすみす逃してしまってはバランスを欠く。リスクとの向き合い方も同様で、(「リスクを取ってでも夢に挑戦する」といった)その時でなければできないトライアルがきっとあるということです。
20代前半なら、たとえ上手くいかなくても人生をリカバーする方法はきっとあるだろう。一方、老後が心配とお金を貯めても、老後になったら贅沢ができるようになるというものでもないと氏は言います。
パーキンス氏の言によれば、「金から楽しみを引き出す能力は、年齢とともに下がっていく」とのこと。老衰し、身体を動かすこともできず、チューブで栄養をとり、排泄も自力ではできなくなれば、人はそれまでの人生の経験を思い出すこと以外ほとんど何もできなくなる。旅行を楽しむには何よりも健康が必要で、何かスポーツをやろうと思っても、40代、50代、60代とハードルはどんどん高くなるばかりだということです。
確かに、金から価値を引き出す能力は年齢とともに低下していく。逆に20代は次々に新しい経験ができ、金から大きな価値を引き出すことができると上阪氏はこの記事に記しています。
だから、経験を楽しむ能力が高いときにたくさんお金を使うべき。20代や30代がまさにその時期であり、そこでは貯蓄を抑えめにし、逆に能力が下がっていく40代以降にこそ、貯蓄を増やしていくといったライフスケジュールが求められるということです。
人生の満足度を上げるコツは、お金以上に、健康と時間を意識すること。実際、人は、豊富で無限にあると感じられる何かに対しては、その価値を低く見積もりがちだと上阪氏は言います。そして現実を見れば、人生の各段階で人が使える時間は、若者が思っているほど多くはないというのが氏の認識です。
だからこそ、パーキンス氏はこの著書で、「やりたいことリスト」を作ることを推奨する。同氏が提案しているのは、資産ゼロで死ぬことであり、そのためにはいつからお金を使い始めるかが重要になるということです。
意識的に「人生」を考えておくこと。そして、充実した「今しかできない」経験にしっかり投資をしていくということが、最も有意義なお金の使い方だと上阪氏はこの記事の最後に綴っています。
「生きるために生きる」のではなく、充実したワクワクする人生をいかに作り上げるか。大切なお金を「どう貯めるか」ではなく、「どう使うか」という視点でとらえることが、幸せな人生に繋がるはずだと考える記事の指摘を、私も(己れを振り返り)興味深く読んだところです。
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