MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯1643 コロナ後の生活防衛と脱都会

2020年06月11日 | 社会・経済


 日本のGDPは概ね500兆円余り。国家予算は約100兆円というところですから、GDPの約2割を政府支出が占めていることが分かります。

 さらに言えば、政府の長期債務残高はGDPの約2倍、総予算の10倍規模の1000兆円を超えたと報じられており、日本がいかに借金国家であるかを物語っています。

 そうした中、今回、新型コロナウイルス対策として政府が編成した(令和2年度の)第1次補正予算は、いわゆる「真水」で25兆円に及びます。さらに(こちらも真水で)32兆円を超える第2次補正が国会を通過すれば、合計で57兆円という気の遠くなるような公費が市中に投じられることになる計算です。

 一口に「57兆円」といっても普通の家計のイメージの中では見当もつきませんが、赤ちゃんからお年寄りまで国民一人一人に配ったとすれば約50万円。(「ばら撒き?」として)話題になった特定定額給付金の実に5倍以上の金額ということになります。

 57兆円の補正予算と言えば、通常の年の予算の半分以上をさらに積み増ししたということ。社会保障費の増大などにより膨らんだ(他国に類を見ない規模の)財政赤字の上に、さらに赤字が重く積みあがっていく構図です。

 加えて言えば、今回の補正予算のうちの約10兆円が予備費として計上されており、通常の年の総予算の約1割が、使い道の定まっていない(政府が自由に使えるお金として)単純に上載せされていることには驚きを禁じえません。

 経済対策を中心に、コロナ禍を乗り切るためには(ここで躊躇せず)公費を投入する必要があるのはわかりますが、負担の先送りが次の世代が暮らす社会の自由度を奪っていることを、きちんと自覚する必要があるでしょう。

 さて、緊急避難的な観点から、こうして(じゃぶじゃぶに)支出される公的資金については、いずれ何らかの形で国民が負担していかなければならないのは言うまでもありません。

 今回、国民が手にした交付金や補助金やアベノマスク代などが、最終的には(法人も含め)国民ひとりひとりに課される「税金」に上載せされることは避けられない現実と言えるでしょう。

 このような状況を踏まえ6月4日の週刊女性PRIMEでは、「コロナ増税はありうる? 専門家が語る収入減対策と脱・東京のススメ」と題する興味深いレポートを掲載しています。

 メディアなどでも活躍する獨協大学教授で経済アナリストの森永卓郎氏は、このレポートにおいて「1次と合わせて約57兆円の財源は国債の新規発行に頼るが、一部は税金としていずれ国民が返済することになるかもしれない」と話しています。

 東日本大震災の際の復興税は、所得税が2.1%上乗せされてその期間は25年間。住民税も1000円上乗せで10年間。法人税は10%上乗せで2年間。結局、これらの金額を合わせて総額10.5兆円の増税になった。

 今回の第1次と2次の実質的な予算規模は(これを大きく上回る)57兆円ほどにも及ぶので、さらに大規模な増税になる可能性が高いということです。

 震災復興税のときは、低所得者世帯には課税されなかったので、コロナ復興税ができたとしてもそのような措置が取られるだろう。なので、世帯年収が700万円から1000万円ぐらいの中所得者層には、相当な追加負担となるのではないかと森本氏は予想しています。

 さらに、IMF(国際通貨基金)は、「高齢化による社会保障費増大で、日本の財政悪化はさらに深刻になる」として、「日本政府は消費税を2030年までに15%、2050年までに20%まで引き上げたほうがいい」と消費増税の提言をしているとレポートは記しています。

 一方、生活経済ジャーナリストの和泉昭子氏は同レポートにおいて、コロナを経験したことにより今後は医療費や社会保障費をさらに手厚くしなくてはならなくなると述べています。

 そうした中で、(人口減や不景気で税収があてにならないとすれば)年金受給開始年齢をさらに遅らせようという話が出てくるかもしれない。

 そうなれば、今回のコロナで仕事を1つに絞ることが失業や収入減のリスクに繋がることがわかった人たちの間に、(そうしたリスクをヘッジするための)新たな「職探し」の機運が生まれるかもしれないというのが氏の予想するところです。

 特に主婦には、一般的なパートのほかにオンラインでできる仕事が提供されるのではないか。感染リスクもないし、時代の流れにも合っている。家事や育児時間の空きを利用して、自由な時間にできると和泉氏は説明しています。

 都会は「三密」で感染のリスクが高く、生活費や税金も高い。なので、テレワークがさらに進めば、当然のように大都市から郊外や地方に移住する動きが活発化する可能性があるということです。

 さて、こうした識者の意見を踏まえ、これまでリタイア後の年配者向けのイメージがあった「地方移住」が、今後は働き盛りや子育て中の若い世代のトレンドになるかもしれないとこのレポートは指摘しています。

 これまでも、金融関係やIT関係ではそうした動きが出てきていたが、今回のコロナでいっそうテレワークが進み、コスト高の都会からオフィスを地方に構える流れが加速していくのではないか。

 とりわけ若い女性は危機感が強く、「将来の子育てにも外で遊べる地方へ」という意識へシフトしていくのではないかということです。

 働き盛りの若い人が流入して来れば、その地域の活性化にもつながる。今回のコロナ禍を機に、多くの若い人とカネの流れが変われば、今まで山積していた日本の課題が一気に解決するかもしれないと期待するこのレポートの予想を、私も(一定の)現実味を持って興味深く受け止めたところです。


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