MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯1569 イタリアで新型コロナウイルスが猛威を振るっている理由

2020年03月18日 | 社会・経済


 通信社ロイターの集計によると、3月17日時点の新型コロナウイルスの感染者は世界全体で18万2260人を超え、死者は7100人を突破したとされています。そこで驚くべきは、中国以外の国や地域での感染者・死者数が、ついに新型コロナが発生した中国国内を上回ったことです。

 ここのところ、欧州における感染の拡大が(EU全土における対応も含め)大きく報じられるようになっていますが、特にイタリアでは感染の拡大と受賞者の増加が急激に進んでいるようです。

 イタリアの衛生当局は3月17日、新型コロナウイルス感染者数が80860人と(一国だけで)中国を上回り、国内における死者数も前日から345人(16%)増加して2503人になったと発表しました。

 同日現在の日本における感染者数が1547人、死者数が34人であることを考えれば、(PCRなどの検査数が少ないことを割り引いても)人口比から言って比較にならない感染拡大が進んでいる状況です。

 イタリア政府が今月10日から全土で外出を控えるよう求めて以降だけを見ても感染者は2万人以上増え、一週間余りで死者数も4倍以上に増えた計算になります。

 感染者のうち死亡した人の割合を示す致死率は7.3%に及び、先月WHO(世界保健機関)などの合同調査チームが発表した中国全体の致死率の3.8%を大きく上回っています。

 こうした状況についてイタリアの専門家は、実際の感染者が検査で確認された数よりも多く、致死率はこうした数字ほどは高くない可能性なども示唆しているということです。

 さて、(いずれにしても)なぜイタリア国内の感染はこれほどまでに急激に広まり、また死者数が他国に比べてこんなに高くなっているのかが気になるところです。

 その大きな理由の一つとして、イタリアの人口構成の高齢化率の高さを挙げる人は多いようです。

 EUの統計局によると、2年前の時点でイタリアの人口で65歳以上の高齢者が占める割合は22.6%とEU加盟国の中で最も高くなっています。

 イタリア国立衛生研究所の分析では、イタリア国内で新型コロナウイルスにより亡くなった人のうちもっとも多いのが80代で42%余り、次いで70代のおよそ35%となっており、60代と90歳以上も含めると死者の94%を占めているということです。

 また、今回のウイルスの発生源となった中国とイタリアとの関係性、つながりの強さを指摘する声も聴かれます。

 イタリアは中国の巨大経済圏構想「一帯一路」にヨーロッパで最初に参加し経済関係を強化、民間レベルでも人の往来が急速に拡大していました。

 実際、昨年イタリアを訪れた中国人観光客は、前年比100万人増の600万人に達したとされています。また、中国系住民が増加も顕著で、イタリア全土で約40万人に及んでいるということです。

 さらに言えば、イタリア在住の中国系住民の7割ほどは(中国本土で感染が深刻な)浙江省温州市出身の繊維関連の工場で働く労働者が占められており、経済的な相互依存関係が感染拡大の背景にあるとの指摘も聞かれます。

 一方、イタリアに重症者や死者の割合が多い理由として、検査の拡大によって入院患者が急激に増加し、医療現場が混乱したことが感染者の重症化を促したと考える向きもあるようです。

 イタリアではこれまで新型コロナの検査を54000件以上してきました。これはもちろん感染者を確定させることが狙いでしたが、軽症の患者も徹底的に検査したため病床が満杯になり、医師や看護師の不足なども加わって(いわゆる)医療崩壊に陥ったというものです。

 米ブルームバーグ通信は世界保健機関(WHO)関係者の話として、「検査をやり過ぎて害を及ぼしたようにみえる」と伝えています。感染者であっても無症状の人、比較的症状の軽い人は医療機関に入院しなくても、自力で回復できた可能性があるということです。

 そして、感染拡大のベースにあるものとして、総じて明るく話好きというイタリア人の社交的な国民性が関係している可能性についても触れる必要があるかもしれません。

 イタリア人は家族や友人とのコミュニケーションを大切にし、食事や団らんなどの時間を周囲の人たちと楽しむ文化を持っていることは広く知られています。

 時に大声で唾を飛ばしあって話をし、時に皆で声を上げて歌を唄う。相手の頬に自分の頬を寄せる挨拶の習慣など、男女を問わず人と人が肉体的に接する機会も多く、イタリア人の感情豊かな気質がウイルスの拡大につながった可能性も十分に考えられます。

 さて、そういう意味で言えば、日本国内で新型コロナウイルスへの感染者が(イタリアほどには)一気に増えている様子がなかったり、感染による死者が激増している様子が見えなかったりするのにもそれなりに理由があるような気がしてきます。

 日本はイタリアにも増して高齢化が進んでいると言えますが、(その一方で)こと清潔さに関しては潔癖なまでのこだわりを持った人々が多い国とも言えるでしょう。

 さらに、もともと気質的に人と人とが直接的に濃厚接触する文化的な背景がなかったり、シャイで外国人と気さくに話ができなかったり、なかなか検査が受けられなくてもじっと我慢したりできる国民性がもしかしたら新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせているのかもしれないと、私も改めて感じたところです。 


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