MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2632 「その日暮らし」のリスク

2024年09月06日 | 社会・経済

 7月24日の韓国紙「江南タイムズ」によると、2024年の上半期において、韓国国内の大卒以上(専門学校を含む)の学歴を持つ非経済活動人口はおよそ405万8千人とのこと。前年同期比で7万2千人増加し、1999年に関連統計が集計され始めて以来最も多い規模だということです。

 韓国で言う「非経済活動人口」とは、15歳以上の人口の中で、就業者でも失業者でもない人々を指している由。働く能力がないか、働けるにもかかわらず働く意思がなく、就活をしない人々だと説明されています。

 日本で言う、(いわゆる)「ニート」と同義で使われている言葉なのでしょう。求職市場を離れた理由としては、育児・家事・高齢・心身障害など事情は様々。最近では、特に大卒以上の非経済活動人口は増加が顕著で、非経済活動人口における大卒者の割合は今期初めて25%を超えたとのこと。仕事も就活もしていない人の4人に1人以上が、大卒以上の学歴を持っていると記事は指摘しています。

 そういえば、学歴社会の韓国では「どんな会社に勤めているか」は大きなステータス。財閥系の一流企業に採用されるまで(無職で)就職浪人を続ける大卒者も多いと聞きいています。

 記事によれば、実際、大卒の非経済活動人口の増加は20代が主導しており、人口が減少しているにもかかわらず、大卒非経済活動人口が増えた年齢層は若年層のみである由。これは、比較的低収入の企業に勤めていた高学歴者が、求職をあきらめたり、再教育などのために就活を断念していると解釈できるということです。

 それでは、海を挟んだこの日本では(ニートは)どのような状況なのでしょう。先日発表された労働力調査(2024)によれば、日本の「若年無業者」(「15~39歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない人」)は2023年で76万人。記録のある1995年以降では最大の人数となった2020年(87万人)から11万人減少しているとされています。

 就業も求職活動もしていない理由としては、「病気やけがで求職がかなわない」事例がもっとも多く32.9%、「知識・能力に自信が無い」が13.0%、「急いで仕事につく必要が無い」が7.6%である由。一方、就業そのものを望んでいない人も多く、「仕事そのものへの自信が無い」(8.3%)、「学校以外で進学や資格取得などの勉強中」(5.5%)のほか、「特に理由は無い」なども含めると、病気やけがによるものに続く第2位の理由となっているということです。

 確かに、身体の不調やケガによる解雇が原因で(いわゆる)引きこもり生活に入ったり、親の介護などにより退職した人が、職に就けないまま(やむなく)生活保護に甘んじているというのは私の周辺でもよく聞くところ。また、就職に失敗し、特に理由のないまま実家で親にパラサイトしている「子供部屋オジサン」「家事手伝いおばさん」の存在も、今ではそんなに珍しいものではないようです。

 さて、話を韓国に戻すと、同国の15~64歳の非労働力人口の総数は総数で1,067万人に及び、15歳以上人口の約3割(29.5%)。同時点の日本の19.3%よりもかなり高く、さらに20~29歳と30~39歳の非労働力人口の割合は、それぞれ35.0%と24.8%で、日本の16.9%や11.8%を大きく上回っているとのこと。20~40歳の働き盛り(?)世代のおよそ3分の1が仕事に就かず仕事を探してもいないという(こうした)韓国の状況は、やはり私たちの目で見てもかなり不自然に感じられるところです。

 因みに、韓国における非労働力人口の内訳を見ると、育児、家事、学業、高齢、障害等を理由としたもの以外に、「働く能力があるにも関わらず仕事を探していない」休業者の割合が14.8%を占めているとのこと。また「就業準備のために仕事を探していない」とする就職浪人も4.2%おり、(日本と比べれば)自分に見合わない不本意な仕事に就きたくないと考える(「プライドの高さ」というのでしょうか)国民性もあるのかもしれません。

 また、韓国は自営業者の割合が高く、2021年時点で23.9%とOECD加盟国33カ国の中で6番目に高いとのこと。この割合は日本の9.8%を大きく上回っていて、勤め人としては働いていないけれども、実家の「〇〇屋」を無給の家族従業者として手伝うことで日々の生活をしのいでいる若者が多いとの指摘もあるようです。

 日本と韓国では統計の取り方や社会環境が大きく異なっているため単純な比較はできませんが、「いい若いもん」がこうして定職に就かなくても暮らしていける日本や韓国は、確かに恵まれていると言えば恵まれている国なのかもしれません。

 「その日暮らし」で食いつなぐ生活も、それはそれで気楽なもの。今はまだ若いので、定職に就かずにブラブラしていても、その辺で野垂れ死ぬことは(たぶん)ないのでしょう。しかし、そうした彼らが高齢者になった時、その生活を支えていく余力が社会に残されているかを考えると、なんだか不安にもなってくるところです。



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