昨年(2021年)10月31日に実施された直近の衆議院議員選挙。景気や雇用、社会保障のほか、新型コロナウイルスへの対応など大きな争点となったこの選挙では、結果として大物議員の引退や落選が相次ぎ、世代交代が進んだ観があります。
実際、当選者の年齢を見てみると、岸田首相による解散直前時点(10月14日)の衆議院議員の平均年齢が59.0歳だったのに対し、改選後の平均年齢は55.5歳と3年半ほど若返ったように見えます。
しかし、その前、2017年に実施された衆議院議員選挙振り返れば、当選当時の衆院議員の平均年齢は54.7歳とさらに1年ほど若く、(現実には)国会議員の高齢化が進んでいる様子が見て取れます。
与野党含めた国会議員だけでなく、(第二次岸田政権組閣時の)閣僚の平均年齢は62.4歳と60歳を優に超えており、閣僚の平均年齢としてはOECD諸国平均53.1歳を10年近く上回って35カ国中最も高いという指摘もあるようです。
因みに、昨年の総選挙の当選者の平均年齢の(前回選挙からの)変化を会派ごとに見ると、与党では自民党が+1.3歳(55.6→56.9)、公明党が-0.1歳(56.5→56.4)となっている一方で、野党の立憲民主党は+1.2歳(53.5→54.7)、共産党は+4.8歳(57.5→62.3)と、野党もかなり年齢が上がっている様子がわかります。
平均年齢が最も高かったのは(実は)共産党で、当選者10人のうち70代が2人、60代が5人、50代が1人、40代が2人と組織が停滞し、世代交代が進んでいない状況が見え隠れしています。
日本の政治において「シルバー民主主義」の弊害が指摘されるようになって久しいものがありますが、それでもなかなか実現しない政治の若返り。11月17日の日本経済新聞のコラム「大機小機」に、『ミレニアル政治勢力への期待』と題する一文が掲載されていたので参考までにその概要をここに残しておきたいと思います。
岸田文雄内閣の支持率低下が新聞の紙面をにぎわしている。最近の世論調査では、政権支持率が1カ月で9ポイント下落し36%に落ち込む一方、不支持率は50%と過去最高。女性に加え、特に18歳~39歳の支持率の下落が目立つと筆者はこのコラムに記しています。
一方、政党支持率をみると、自民党の支持率が40%から33%に激減したにもかかわらず、野党各党の支持率は一向に上向く気配が見えない。数字を見る限り、目下の最大の政治勢力は「支持政党なし」のグループで、その支持率は37%から43%に増加しているということです。
こうした状況は、(我が国で)国民の負託に応えるべき政治勢力が国民の意思を反映した形で組織化されていないことを示唆しているというのが筆者の認識です。
7月に行われた参議院議員選挙時における総有権者数はおよそ1億500万人。これを年代別に見ると、20代以下が1370万人、30代が1330万人、40代が1710万人、50代が1630万人、60代が1560万人、70代以上が2890万人になると筆者はしています。
一方、同選挙の平均投票率は52%だが、これを年齢別に見ると、20代が34%、30代が45%、40代が51%、50代が57%、60代が66%で、70代以上が56%とその差は大きい。そしてこれこそが、既存政党が、シルバーデモクラシーといわれる、高齢者の意見を過剰に政治に反映する傾向を示す所以だというのが筆者の見解です。
しかし、我が国が将来に向けて対策を進めるべき、国家債務の秩序なき膨張・将来の社会保障問題・非正規労働・気候変動や防衛などの課題については、ミレニアル世代やZ世代こそが問題の当事者だと筆者はこの一文に綴っています。
この世代は、予算規模のみ追いかける既存政党の指導者の犠牲になりかねないし、世界の情勢によっては、徴兵の対象者となる可能性すら秘めている。にもかかわらず、彼ら世代の利害や考え方が、政治に反映されにくい構造になっているということです。
さらに、既存政党は、「当選回数主義」という党内の年功序列制度に強く縛られ、(発言力によっても)若者世代の影響を排していると氏は言います。米国の中間選挙では、高齢者に支持される共和党に対して、(民主党左派を中心に)ミレニアル世代やZ世代の若者が大きな波を起こしているが、日本国内におけるこの世代の胎動はいまだ始まっていないように見えるということです。
さて、(試しに)先ほど示された年代ごとの有権者の数に(それぞれの)投票率を掛けて政治への影響力を計算すると、20代が8.5%、30代が10.9%、40代が15.8%、50代が16.8%であるのに対し、60代は18.7%、70代以上は29.3%と、年金の受給が可能な60歳以上の年代が、概ね半分の影響力を握っていることが判ります。
もちろん政治家としては、数が少ないうえに政治に関心を示さない若い世代の方を向いていても票にはならない。これこそが、シルバー民主主義のリアルな実態だということなのでしょう。
しかし、(団塊の世代の退出に合わせ)我が国でもミレニアル世代以下の有権者が3千万人と、全有権者の3割を占めるまでに増えてきている。この層を新しい政治勢力として活性化・組織化できれば、この国の将来に向けた勢いがつき、燭光が見えるのではないかと筆者はこの論考の最後に記しています。
もうすぐ時代は大きく進む可能性がある。(手始めに)来年は統一地方選があり、立ち上がる若者たちを見る日が楽しみだとこの論考を結ぶコラムの指摘を、私も(ぜひそうあってほしいと)期待をもって受け止めたところです。
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