つれづれなるまま(小浜正子ブログ)

カリフォルニアから東京に戻り、「カリフォルニアへたれ日記」を改称しました。

ヨーロッパの衰退と世界の平準化?-フランスにて

2013-08-01 07:15:45 | 日記

マンチェスターでの学会を終えて、フランスに来ている。学生時代に一度ツァーで来て以来で、ほとんど初めてのヨーロッパなのでお上りさん状態である。
古い友人のNさんがブルターニュの小さな町に住んでいるのを訪ねた。お連れ合いはフランス人のコンピューター技術者で、3人の男の子のいる彼女のお宅に、「フランスの庶民の生活を見ていって」という言葉に甘えておじゃまし、モン・サン・ミッシェルなどの観光地にも連れて行って頂いた。
モン・サン・ミッシェルに私達が着いた時には大嵐で、雨風の中をかなりの距離を歩いて、巡礼の気分で修道院兼教会を訪れたのは良い経験だったが、付き合わせたNさん夫妻には申し訳なかった。巡礼の気分になれたもう一つの理由は、観光客がとても少なかったことだ。7月末のバカンスの季節の週末だったにもかかわらず、混雑というほどのことはなく、ゆっくり見て回ることが出来た。サン・マロは英仏海峡を望む港町で、日本のガイドブックにも小さく載ってはいるが、観光客は基本的にフランス国内からの人が中心だ。こういう所に人が来ていない、というのは、フランスがよっぽど景気が悪くて、皆がバカンスを楽しめないでいる、ということらしい。Nさんのお連れ合いの両親の頃は、フランスの人々は5週間くらいバカンスをとり、3週間くらい海などの保養地に出かけてゆっくり楽しむことが普通に出来ていた、という。しかし近年そのようなゆとりのある暮らし方は過去のものになり、とりわけヨーロッパの金融危機の影響でこのところ皆大変になっている。最近は3週間くらいの夏休みを取るのがせいぜいになっている、とか。その昔、話にきいた長いバカンスを本当に皆が取っていた、というのもすごいと思ったが、それが今は無理になったというのは、ここにもまたグローバリゼーションの波がそれなりの仕方で及んでいるらしい。
日本人もフランス人も少なくなったモン・サン・ミシェルやパリの有名観光地の売り上げを救っているのは、近年増えた中国人観光客(とロシア人観光客)だ、という事情は日本の観光地と似たものがある。中国の人々(といっても中間層以上の人たち)が海外に観光旅行に行くようになったのはここ数年で、商業ツーリズムに目覚めた彼らは今、あちこちに出かけて、買い物しまくってみたくて堪らないようだ(たぶん一世代前の日本人のように)。一世代前の中国人にはそれは夢のまた夢だったことを思えば、多くの国の人が旅行を楽しめるようになったのは、悪いことではないのかもしれない。欧米に偏在していた富が日本に移動し、今は中国に動いている。それでもまだ、ほとんどの日本人や中国人にとっては、三週間の夏休みは望みがたいことを思えば、少しばかり世界が平準化する時にフランス人の休暇が短くなるのはやむを得ないのかどうか、よくわからないけれど。