さくらの丘

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年金支給繰り下げは結局得になるのか? (上)

2021年06月20日 | 福祉


年金繰り下げは結局得になるのか? (上)

 今年4月2日生まれ以降の男性は、ついに厚生年金・共済年金の支給開始が65歳以降となった。ただし厚生年金に加入している女性は、1966年4月1日以前の生まれであれば、誕生日によって特別支給の老齢厚生年金が支給される(共済年金は男女共通なのでなし)。

これにより、65歳前に仕事を退職し年金暮らしを満喫するという姿は、ほぼなくなっていくことになる。既に各企業等の定年延長策が進んでおり、すくなくとも65歳になるまでは働くことが当たり前になっている。このことは、国の家計調査データにも現れており、60~65歳未満の家計収入の中軸は、既に仕事による収入になっている。

 おりしも2020年6月より年金制度改正法(令和2年法律第40号)が公布され、「より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれる中で、今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図る」ために下記のことがおこなわれることになった。

被用者保険(厚生年金保険、健康保険)の適用範囲の拡大
在職中の年金受給の在り方の見直し
受給開始時期の選択肢の拡大
確定拠出年金の加入可能要件の見直し等

避けた方が良い 年金の繰り上げ支給

ここでは、「受給開始時期の選択肢の拡大」を取り上げて、年金受給開始を遅らせることで、得になることがあるのかを検証してみよう。

 「受給開始時期の選択肢の拡大」とは、現在年金の受給(受け取り)は、原則は65歳からであるが、60歳から70歳までの範囲で繰り上げたり、繰り下げたりできるようになっている。これを繰り下げの場合、75歳まで繰り下げることができるという変更である。

 繰り上げに関しては、減額措置が伴い、最大年金受給額が30%減少するとされている(受給開始時期による)。一度繰り上げ受給をしてしまうと、途中で止めることができない、障害年金が受けられない場合があることや、寡婦年金が受給できないなどデメリットが多く、基本的にはお勧めできない。しかし厚生労働省の調査によると65歳未満の10%程度が繰り上げ受給をしているとみられる。年金受給しないと生活できないなど、やむを得ない事情があるとみられるが、なるべく避けたい判断ではある。

 一方、繰り下げについて、繰下げ増額率は1月あたり、プラス0.7%となり、75歳まで繰り下げると最大プラス84%になるとされている(2022年4月1日以降に70歳になる人から適用)。

<中へつづく>