さくらの丘

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コロナが引き下げた生活満足度

2021年09月17日 | ライフプラン

コロナが引き下げた生活満足度

東京圏の満足度が急降下

 世の中には、様々な尺度で順位付けをおこなうことが一種の流行になっている。「住みたい街ランキング」のようなものだ。ちなみに2021年関東住みたい街ランキングの1位は、「横浜」で4年連続トップということである。

 同様のランキングで、都道府県『生活満足度』ランキングがある。これは、ブランド総合研究所が2020年6月に行った「住民視点で地域の課題を明らかにする『都道府県SDGs調査2020』」によるもので、コロナ禍の生活実態を反映している。これによるとトップは、沖縄県で前年の25位から大幅上昇である。以下、福岡県、香川県、石川県、鳥取県と続く。これらの特徴は、福岡県を別として大都会及びその周辺都市が含まれないところが、上位に来ていることである。一方、首都圏では、埼玉県2→14位、東京都16→20位、千葉県1→26位、神奈川県5→31位といずれもダウンとなっており、千葉県・神奈川県の凋落振りは顕著である。この要因は、言わずもがな新型コロナである。

 「満足度・生活の質に関する調査報告書 2021」(総務省、9月)によると、「2021年3月の生活満足度は5.74となり、1年前から0.09低下した。特に女性は生活 満足度が0.12低下している。」としており、全国的に生活満足度の低下が見られ、特に女性に強く現れている。

 地域別の満足度では、地方圏・三大都市圏・東京圏で区分けすると、いずれの地域も満足度は低下しているものの、特に東京圏での満足度低下が著しく、元々地方圏よりも高かった満足度がこれを下回る最低となった。

 この数字に、東京圏など都市部の新型コロナ感染者数を対比させると、やはり生活満足度が下がっている都府県と感染者数は相関が見られる。これには、東京圏の4都県だけではなく、大阪府や沖縄県も含まれる。つまり、新型コロナの新規感染者数が多い地域での生活満足度が、下がっているのである。感染リスクに怯えながら暮らしていくことでのストレスなどから、生活満足度の低下を招いていると考えられる。

 

女性に強く影響した生活満足度の低下

 先の調査では、生活満足度を詳細に見るために13項目に分けて満足度を見ている。これによると満足度の上がった項目は、「家計と資産」「子育てのしやすさ」「雇用環境と賃金」「政府・行政・裁判所への信頼性」「身の回りの安全」「自然環境」などである。一方、満足度の下がった項目は、「生活の楽しさ・面白さ」「社会とのつながり」「生活(総合満足度)」「健康状態」となっている。

 満足度の高い項目で言えば、「家計と資産」は、収入的には2020年は一人当たり10万円の特別定額給付金があり、支出的にはレジャー費用や交通費などがコロナ禍で抑制されたことにより、預貯金が増えていることが背景にある。

 ここまでの結果は男女総合の傾向であり、これを女性に限って変化を見ると、また違った様相になる。例えば「生活の楽しさ・面白さ」の項目では、男性は僅かながら満足度が高いものの、一転して女性の満足度はかなり低くなっている。同様に、「社会とのつながり」「健康」の女性における満足度が低く、「生活(総合満足度)」も低い結果となっている。

 また「困っている」という点については、「コロナに関係する感染不安や心理的ストレス」「友人・知人との交流が減ったこと」では、女性の非常に困っている・ある程度困っているの割合が、明らかに女性の方が高い結果となっている。感染不安などの心理的ストレスに関しては、他の調査でも女性の方がより強くストレスを持っていることが報告されており、子どもを含めた家族の感染等への不安を募らせていることが伺われる。

 「社会とのつながり」は人とのつながりとも考えられ、感染防止の観点から友だちなどと会うことも抑制されていることが、元々他者との関係性の幅が広い女性で、強く満足度を下げることにつながったと考えられる。一方、SNS利用に関しても、元々女性の方が活発に利用する傾向にあるが、この調査によるとSNS利用の増加が、必ずしも生活満足度の向上には結びついていない結果となっており、一方SNS利用の減少は、顕著な生活満足度の低下に結びついている。

 

 このようにコロナ禍は、表面的事柄だけでなく、生活の様々な側面、そして私達自身に大きな影響を及ぼしつつある。現在は新規感染者数も一時の急増状態を脱しつつある状態で、8月時点の恐怖感は多少なりとも収まってきていると考えられる。しかし、まだ感染に怯えなくても良い状態を見通すことはできていない。また、コロナ後には、元に戻るのであろうか。もう元には戻らないという言説もある。

 人々の幸福度は常に変化するものであるが、先行きの明るさが必要だ。