さくらの丘

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おススメ 70歳以上も働き続けること (下)

2021年10月14日 | ライフプラン

おススメ 70歳以上も働き続けること

 

4.70歳代の健康状態

 60歳代から70歳台前半のシニアは健康で活動的である。「アクティブ・シニア」という言葉もあり、一般的に「仕事・趣味などに意欲的で、健康意識が高い傾向にある活発な高齢者」とされている。概ね前期高齢者(65~75歳)を指して使われることが多い。この世代を対象として、様々なマーケティング施策も講じられており、一定の人数構成となることから、注目もされている。

 これを数字的にみると、2021年6月時点で介護保険のサービスを受けられる65歳以上の高齢者数は、約3582万人である(介護保険事業状況報告、厚労省、2021年6月)。これに対して65~75歳未満で実際に介護認定(要支援・要介護)を受けて介護サービスを利用している人は、約77万人(4.4%)に過ぎない。介護認定を受けている人の中でも11%であり、この世代はまだまだ元気な世代である。実際、介護認定を受けている世代は、80歳台以降の人たちが中心になっている。

 70歳代になると、体の不具合なども顕在化しがちだが、それをもって寝たきりといった介護状態になってしまうことは少なく、普通に自立した生活を多くの人が送っているのが実態である。ただし、実際に介護を要する状態にならないまでも、加齢により心身が老い衰えた状態であるフレイルやロコモ(「立つ」「歩く」といった機能=移動機能が低下している状態)になってしまうリスクが顕在化しやすいのが、この世代の特徴になっている。

 

5.70歳代でも働くことの大切さ

 つまりこの世代は、心と体を意識的に使って活動することが大切だということである。「家ですることがなくて、何となくテレビを見ている」とか、「出かけるときは車に乗って」といった生活を送っていると、フレイルやロコモ直行便になってしまう危険性がとても高くなってしまう。

 これを防ぐためには、意識的に心と体を使った生活を送る必要がある。スポーツをおこなうことや趣味で出かけることも立派に予防策にはなる。こうした活動が実際に認知症予防に効果のあることには、様々な知見が出されており、今や常識的でもある。こうした活動と共に、実は「仕事」をすることがとても有効であることが明らかになっている。

 仕事をするということは、頭脳と体を使うことになり、例えば通勤で朝夕30分程度歩くことでも健康を維持することができる。そして収入を得ることができれば、なお良いということにならないだろうか。70歳代では経済的不安が低くなる傾向ではあるが、収入が増える分には困ることはないはずだ。

 

6.問題は働く先のこと

 冒頭で述べたように、社会的には今年70歳までの就労機会確保が事業者の努力義務として定められたところであり、まだ70歳までの就労が定着していない段階である。こうした中で、70歳以降も働き続けられる社会環境は、まだ整っていない。

 実際70歳以降でも就労できる機会は、各地のシルバー人材センターに寄せられる求人、もしくは清掃・警備・介護・運転手といった業務に限定されているのが実情である(例外はある)。もっと様々な業種で活躍できる場を作っていくことが望まれる。

 この世代の働き方については、今後様々な検討や実践の積み重ねが必要であるが、自らの心身の健康を維持しつつ、働き甲斐を感じて、収入もえることができる仕事づくりを社会の課題としていく必要がある。従来型の雇用者の枠に留まらない働き方も選択肢の一つになる可能性もある。