オオカミになりたい(遺言)

ずっとそばにいるよ

古今名婦伝 「松島局」

2018-05-14 | 豊国錦絵

松島局(まつしまのつぼね)は鎌倉時代前期の女性

生没年未詳

文久2年(1862)出版  歌川豊国(国貞)絵

 

松島局の父は佐渡守・藤親㤗(とうのちかやす)なり

局(つぼね)は鎌倉御所の奥に宮仕えして容顔美麗なる名を高し

そればかりでなく性質(こころばせ)優に窈窕(やさし)く志操篤実なり

和田義盛より三男朝比奈義秀の妻にしたいとの申し入れにより

奉公のいとまを賜り、既に義秀が妻たるに定まっていたが

北条義時の二男朝時がかねてより松島に眷恋しており

今 和田氏へ婚姻することは安からざること堪え難きを

義時は不憫に思う余り 執権の威に任せ 尼将軍政子の方に内訴した

尼公も甥の胸を察し謀議を設け松島を召篭め置きて

和田へ渡さず 密かに朝時に与えんとしていたが

松島心に思うのは 他に嫁げば義秀に不貞なり

尼公の命に背けば不忠なり 忠貞兼ねることを充てはずし

ただ命を棄てて婦道を守らんと夜中 刃に伏て没す。

行年十八歳と聞えたり

義婦に逼って生命を奪うのは竒(めずらし)きことではないが

誰かはこれを惜しんでいるであろう。

      (柳亭種彦記)


『雪の松 おれくち見れば なお寒し』