5月21日、大阪の友人Mクンから宅配便が届きました。
何の連絡もなく、いきなりの宅配便だったけれど
彼らしいかも?とも思いつつ、貼ってある伝票を見ると
「カレンダー」とありました。
(もう6月に入ろうかというのに今頃
自分の制作した作品のカレンダーでも送ってきたのだろうか?
意味がわからん・・・)
など思いながら荷をほどきました。
中には巻かれたカレンダー、そして封書が1通。
(なにかカレンダーについてのコメントがあるんだな)
と思った瞬間、その封書の色に不安な気持ちが…
和紙風の淡いブルーの封書です。
急ぎ開けると2枚のメッセージ、
1枚目には、
謹啓 故…
永眠…
私の目にこんな文字が飛び込んできました。
ドキッとしました。
Mクンは亡くなったのです。
2枚目のメッセージのトップに彼の写真と「お別れのご挨拶」。
以下がその本文です。
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お別れのご挨拶
今生で出会うことができました皆様、たいへんお世話になりました。
生前、たいして面白味の無い人間のこの私にお声かけていただき、
そのご慈愛に深く感謝いたします。
おかげさまで、色とりどりの楽しい人生を、存分に味わうことができました。
戦後の平和な時代に生を授かり、この国の経済成長と未来への夢とともに育ち、
経済的な豊かさも、ひととき味わうことも出来ましたことは、まことに幸運でした。
また、安らかな家庭と、健やかな子供にも恵まれ、過分の幸せと感じています。
幸い強い健康な身体で、大過なく過ごせたのも、ご先祖さまのおかげと感謝しております。
こうして人生を思い返してみますと、案外なんでもない風景ばかりが断片的に思い浮かびます。
そのひとつひとつが、今でもその時の季節の香りまで伴ってくれて、キラめきながら甦ってまいります。
ああー、面白かったなー、楽しかったなー、生きるって良いなーと心の底から思います。
でも、同じ映画も二度も見たら感動は薄れます。
あの感動は、あの一瞬でしか味わえないものです。
見果てぬ夢や、希望もいくつかありますが、それは未練として今生に残してまいります。
今とても爽やかな気分です。とても幸せな気分に包まれています。
この気分がずーっと続いてくれても良いのですが、元来私は飽きっぽい性分なので
このあたりで、次の世界に旅立ちたいと思います。
それでは皆様、ありがとうございました。
さようなら。
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ジンと胸に迫る。
自分の死期を悟り、締念をもって今までの歩みを振り返り見たのですね。
いつもカッコつけしいの彼でしたが、最後まで彼らしい姿勢を貫いたのです。
バブルの時代に懸命に働き生き抜いて来たことがよくわかります。
その頃は仕事もいっぱいあって、やりがいもあった時代でしたね。
素晴らしい家族にも恵まれて、いや彼自身が家族を大切に愛おしんできたのでしょう。
彼を支えてくれるたくさんの方々にも慕われたのでしょう。
いい人生を過ごし、さらに理想的な締めくくり方で閉じるのですね。
写真もよくまぁ~こんなベストショットがあったもんだと思える写真です。
来るべき日を予測して撮ったわけでもないでしょうに・・・
私もかくありたいと思うのですが、とても真似できそうもありません。
どういうことでしょう・・・最近大切な人が次々に旅立って行きます。
残念でなりませんが、誰でも一度は体験しなければならないことも事実です。
いずれ私にもその時がくるのでしょうけれど、
それまでにやり残したことがないよう、
もがきながら一日一日進んでいきましょう。
悲しさも寂しさも募りますが、先へ進みましょう。
Mクン、今までいろいろたくさんありがとう。
今度会える時にはボクも君にいっぱいの思いを持っていきます。
もうしばらく待っていてください。
追伸 正確には宅配便はMクンからではなく、彼のスタジオのスタッフからで、
同封のカレンダーは彼の版画のカレンダーでした。
彼からのメッセージが届いた5月21日にわが家に咲いていたレモンの花。
これから毎年、レモンの花を見るたびに彼を思いましょう。
これをご覧いただく方には縁もゆかりもない彼ですが、
彼のこの素敵な最後のメッセージをご覧いただきたくご紹介いたしました。
長々とした稚拙な文章を最後までご覧いただき心より感謝します。
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