検索サービス「ヤフー」を展開するZホールディングス(HD)とLINEが経営統合に向けて最終調整に入った。LINEの対話アプリの利用者は約8千万人で、ヤフーのサービスは5千万人に上る。金融、小売りも手がける1億人規模のサービス基盤が誕生し、国内ネット産業の勢力図が大きく変わる。アジアを舞台に米国や中国のメガプラットフォーマーに対抗する。
Zホールディングスの株式を4割超握るソフトバンクとLINEの株式を7割超保有する韓国ネイバーを交えて交渉を進めており月内にも統合の基本合意を目指す。
関係当局の承認を前提として統合の枠組みの詳細を詰めている。統合案としてソフトバンクとネイバーが50%ずつ出資する共同出資会社を設立し、ZHD株の7割程度保有する親会社になる。ZHDの傘下に100%子会社の「ヤフー」と「LINE」が入る案が検討されている。ZHDには3割程度の一般株主が残り、上場を続ける。
共同出資会社への出資比率は50%ずつだが、ソフトバンクがこの会社を連結子会社とすることで調整している。現在はソフトバンクがZHDに約45%出資し、ネイバーはLINE株の73%を握っている。
ZHDの2019年3月期の連結売上高は9547億円で、LINEは2071億円(18年12月期)。2社を合わせると楽天を抜き、国内の主要なネット企業で売上高首位となる。
時価総額はZHDが1兆8518億円、LINEが1兆1048億円。ニューヨーク証券取引所に上場するLINEの株価は13日、前日比13%高で取引が始まった。ZHDも夜間の私設取引システム(PTS)で前日比20%高となっている。
統合の理由は、国内外で進むネットサービスの地殻変動だ。従来、電子商取引(EC)サイトやSNS(交流サイト)、金融サービスなどサービスごとにネット企業が分散してきたが、消費者のネット利用が一般的になり、中国では1つの窓口で各種サービスをまかなう巨大企業が出てきている。
代表例が中国の騰訊控股(テンセント)だ。10億人規模の利用者を持ち、対話アプリ「ウィーチャット」のほか、ネット通販や決済、動画配信、ゲームなどを手がけ、人々の生活全般にかかわるサービスを提供する「スーパーアプリ」として台頭。消費者のデータを集めるメガプラットフォーマーとしての地位を固めている。
国内ネット業界でもスーパーアプリ化に向け、成長分野に企業が殺到している。例えば、決済サービスでは金融機関だけでなく通信会社やネット企業が参入し、サービスが乱立する。データ分析を巡り、人工知能(AI)の活用も進む。総合サービスとしていかに顧客基盤を拡大し、顧客データを集約できるかが今後の各社の勝敗を分ける。