トランプ大統領は、いよいよ本気で中国・習近平を叩き潰しにきている…
コロナ禍のウラの暗闘世界の主要国がコロナ禍に苦しむ中、中国で注目に値する出来事があった。
5月5日、中国が大型ロケットである“長征5号B”の打ち上げに成功した。
ロケット打ち上げの背景には、5G通信網を中心にIT先端分野で主導権を握ろうとする中国の明確な意図がある。
5G通信の普及には地上の基地局の増設に加え、通信衛星などの運用も欠かせない。
すでに中国は米国を上回るGPS衛星(北斗)を打ち上げ、5G通信への応用を目指している。
一方、今のところ、米国は中国に対抗できる通信技術を世界に提示するには至っていない。
大統領選挙を控え、トランプ大統領は対中批判を強めることで支持を確保したいはずだ。
トランプ氏は中国が保有する米国債の償還を拒否する可能性まで仄めかし始めた。
米国がIT先端分野を中心とする中国の台頭を無理やりに抑え込もうとしていることは、コロナショックで混乱する世界経済を更なる下押し圧力にさらす恐れがある。
コロナ禍で明らかになった5G通信の威力
コロナショックの発生を契機に、5G通信を中心とする先端技術が経済に与える影響の大きさが明らかになった。
テレワークが当たり前になり、もはや通勤電車に乗って出勤することは考えられないと感じる人は多い。
つまり、デジタル技術が新しい価値観、生き方をもたらした。
同時に、テレワークの普及などによりデータ通信量が急増し、5G通信の重要性が高まっている。
中国がロケットの打ち上げに取り組んだ背景の一つには、次世代通信の需要を取り込む狙いがある。
3月、4月と長征ロケットの打ち上げは失敗した。
その一因に米国の対中制裁が影響したとの指摘がある。
短期間で中国が5G衛星の運用を支える大型ロケットを打ち上げたことは、技術力の急速な向上の裏返しとみるべきだ。
大型ロケットの打ち上げにより中国は5Gなど先端分野での強さを追求する姿勢を内外に明示したともいえる。
また、中国はGPS衛星などを用いて人の移動を徹底して管理し、感染拡大を食い止めた。
その上で、共産党政権はIT先端分野の競争力向上に注力している。
足許、中国はビッグデータを用いた感染対策や、AIやクラウドコンピューティングなどを用いた医療資材などのマッチング、アフターコロナのライフスタイルを念頭に置いたエンターテイメントなどのプラットフォーム構築に注力している。
それをけん引する代表的な企業がBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)だ。
対して米国は感染対策と経済再開のバランスをとることに必死だ。
米IT業界では動画閲覧の増加による通信インフラへの負担軽減のために、YouTubeやネットフリックスなどが画質を制限した。
本来であれば、米政府はそうした問題解決のために財政支出や国際連携を通して5G通信の普及に取り組み対中包囲網を形成すべきだ。
しかし、トランプ政権はそうした取り組みよりも、圧力を用いた対中批判に傾いてしまっている。
国家主導のオープン・イノベーションを推進する中国
ある意味、コロナショックにはデジタル技術などを用いて経済成長を目指すチャンスとしての側面がある。
それを考える一つのキーワードが“オープン・イノベーション”だ。
医療資材が枯渇した米国では、ウィスコンシン大学の研究者がフェイスシールドの設計書をネット上に公開し、自動車メーカーのフォードが独自改良を加えて生産を進めた。
米国では個々の企業同士がミクロのレベルで連携し、オープン・イノベーションが進み始めている。
一方、中国では国家主導でオープン・イノベーションが進んでいる。
共産党政権がデジタル技術を用いたプラットフォーム構築を重視する中、アリババなどはウイルス遺伝子解析プラットフォームを世界の医療機関などに無償で公開し始めた。
また、中国のレノボとゲノム解析大手の華大基因(BGI)は、米インテルとスーパーコンピューターを用いたゲノム分析を共同して進めている。
中国の国家資本主義体制が支えるイノベーションのスピード、規模感にはかなりの勢いがある。
米中企業の提携は、IT革命を主導しGAFAを育てた米国にとって中国の力が軽視できなくなっていることを示している。
米国が中国の台頭に対応するには、より強くオープン・イノベーションを推進しなければならないだろう。
GAFAやBATHのような企業が見当たらないわが国が構造改革を徹底しなければならない。
19世紀後半、大英帝国は海底ケーブルを敷設し、電信網を整備して覇権を強化した。
今、中国は陸(ファーウェイなどの通信機器)、海(海底ケーブル)、空(通信衛星)から5G通信の主導権を狙っている。
これまでトランプ大統領が中国に圧力をかければかけるほど、中国のイノベーションは勢いづいた。
圧力一辺倒のトランプ政権がIT先端分野を中心とする中国の覇権強化にどう対応できるか、先行き不透明感は一段と高まっている。