祥一郎・・・・・・
きょうはね、ちょっと思いたって、お前が月に何度か通っていたトレーニングセンターを探して行ってみようと思ったんだ。
区内の町名のついた体育館にあると聞いていたから、調べたらすぐわかったよ。
でも、同じ区内とはいえ、よくこんな遠くまであのボロママチャリで通っていたね。
おっちゃんちょっと迷ってしまったよ。
やっとみつけた〇〇〇体育館。
そこの受け付けでまず聞いてみたたんだ。
「ここは、会員制でカードを発行したりするのですか?」
その質問には月極めで使用する人はカードがあるらしいけど、好きな時に使用する分には一回だけのチケットを購入して、番号を記入するだけらしい。値段は300円
だから勿論ロッカーなんか使用してなくて、私物も預けて無かったね。
体育館に併設されたそのトレーニングルームに見学者として行ってみたよ。
まあ想像していたとおり、それほど広くも無く、うらぶれたトレーニングルームだった。
機械もそれほど多くは置いて無かったね。
でも土曜日だということもあって、結構な人が汗を流していた。
そこに立っていたおそらくインストラクターだと思われる若い女性に聞いてみたんだ。
「ここは、使用するのに名前を記入したりするんですか?
「いえ、チケットを買って頂いて、その番号を記入していただきます。」
ということは遡っても、お前の名前を記入した参加者名簿は無いということだ。
だから一瞬ちょっと迷って、そのインストラクターのお姉さんに、お前の画像を見せてみたんだ。
「あの・・・・こんな人を御存知ですか?」
「えっ?ちょっと私は・・・・あれ、この二枚の画像、同一人物ですか?」
「はい、そうです。」
「あっわたし、知ってるかも知れません。真っ黒に日焼けして、いつも笑顔の方ですよね?」
「多分そうだと思います。」
「お探しですか?」
「いえ、実は・・・・この人、去年末に亡くなってしまって。もしかしたら私物でも預かってないかと思って来て見たんです。」
「えええ?そうなんですか?まだお若いでしょ?」
「・・・・・46歳でした。」
「そ、それは・・・・・・・」
「・・・色々とお世話になりました。」
最後の方はおっちゃん、涙声になってその場を後にしたよ。
もしかしたらお前の名前の書いた名簿くらい残っていないかと思ったけど、無駄だったね。
帰り路、思ったんだ。
お前は貧乏は貧乏なりに、好きなトレーニングを如何に安くやろうと、ここへ通っていた。。
もっと近くにフィットネスクラブはあるけれど、月の会費がとても払える値段じゃなかったので、お前はやっと探したこの場所に通っていた。
一生懸命身体を鍛えて、一生懸命生きようとしていたんだね。
いじらしくて、可哀想で、哀しくて、淋しくて、おっちゃん帰りながら自転車に乗って涙が溢れてどうしようもなかったよ。
結局何もお前の生きた証の収穫はなかった。
唯一、あのインストラクターのお姉さんが覚えていてくれたことか。
なにやら先日書いた、近所のスーパーのお話しみたいだね。
でもうろ覚えでも、あのお姉さんが少しでも覚えていてくれたのは、おっちゃん嬉しかったよ。
きっとすぐ忘れてしまうだろうけど・・・・
お前が通って足跡を残した施設に行ってきて、少しでもお前を身近に感じたかったきょうの出来事だった。
もう遠くに逝ってしまった祥一郎、お前の存在をね・・・・・・・・