階段下の、ポスト、祥一郎の名前がもう消えかかっている。
あいつは毎日自分宛ての物がないか確認していたけれど、私はあまりしない。
三日か四日に一度くらいだ。
どうせ請求書と、くだらないチラシくらいしか入っていないから。
でも・・・・・
ときおりまだ、祥一郎宛てのダイレクトメールが届く。
もうこの部屋に、この世に居ない祥一郎に届く。
殆どがコスメ関係の会社からのものだ。
あいつはそれはそれは多くのコスメを通販で買ったり、ネットで試供品を申し込んだりしていたから、
今だに届くのだ。
それを手に取り、わたしはどうしていいのか迷う。
すぐ処分するのもなんだか切ないし、かといって取っておいても祥一郎はもう居ない。
結局はしばらくテーブルの上に放っておいて、やはり処分する事になってしまう。
先日 再春館製薬という会社からのDMが届いた。あのドモホルンリンクルの会社だ。
何を思ったのか、わたしはそのDMに書いてある電話番号にかけてみた。
「すいません、〇〇祥一郎宛てに届いたDMの事なんですけど。」
「はい、いつも有り難うございます。本日はお買い上げですか?」
「いえ、実は・・・・・私はこの〇〇祥一郎の同居人なんですけど、彼はもう亡くなったんです。」
「・・・・そ、それはそれは・・・・お悔み申し上げます。あの、念の為御住所を確認させて頂いてもよろしいですか?」
私は住所を伝え、
「そう言う事なので、お宅に会員登録しているのなら、抹消して頂きたいんです。」
「はい、かしこまりました。わざわざ有り難うございます。この度は本当にお悔やみ申し上げます。今までありがとうございました。」
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・・・・・・・・
というようなやり取りがあり、電話を切った。
切った後、やるせなくて切なくて涙が溢れて止まらなかった。
これからも別のDMがときおり届くだろう。
祥一郎の住所なり会員番号なりがまだ登録されていてまた届くだろう。私の知らないところで、祥一郎はまだ生きていることになっているのだ。
それを思うとなんとも言えない感情に襲われる。
やはりDMが届く度、上で書いたようにちゃんと報告した方がいいのだろうか。
その度に哀しくなるが、かといってそれをしないとまた届いてしまってその封筒を見るとはやり哀しくなる。
祥一郎・・・・・・・
おっちゃんはどうしたらいいんだい?
どっちにしても悲しい思いをすることになるよ。
だから、だからあまりポストの中を見るのが嫌なんだ・・・・
祥一郎・・・・・・切ないよ・・・・