9月18日午後3時30分からのセレネ美術館の中での美術館コンサート。
セレネ美術館は、ちょっと変わった美術館です。何が変わっているのかというと、黒部峡谷の自然のすばらしさを多くの人に知ってもらうために、平山郁夫先生を始めとした日本画のみなさんに作品を提供していただいているのです。それも、先生方が制作された作品のうち、黒部峡谷にかかわるものを提供いただいているのではなく、画家の先生を黒部峡谷に連れて行って、そこで作品の取材をして、そこから大きな芸術作品を作り上げています。
もちろん、取材には、黒部峡谷ですから山岳ガイドが付き、画家のみなさんも雨の中、山の中で延々と取材をされています。
黒部峡谷は太古から受け継がれた自然だけでなく、大正期からの電源開発などの歴史もあって、そうした人が立ち向かったものも含めて、単純に写真で紹介するのではなく、芸術家が黒部峡谷を間近にした感動やそこに感じ得た計り知れないものの姿を、日本画という作品に置き換えて、人の心、感性までを含んだ価値としてみなさんに、また、後世に伝えようというコンセプトで集められ、展示された作品群が所狭しと並んでいます。
その絵画の中での演奏は、法律的な制限から黒部峡谷内での演奏会ができないことを補って余りあるすばらしいものになりました。
出演いただいたのは、fleurireさんとアンサンブルミルトスさんです。
絵画の中での演奏は美術館ではすっかりお馴染みになったプログラムですが、黒部峡谷の美術館で、黒部峡谷の絵を前にしてのモーツァルトという組み合わせはそう滅多にはないと思います。
黒部川の流れはモーツァルトを奏でる
というのは、この音楽祭を始めるときに、黒部川での絵のモデルになった釣り師のことばですが、まさしく、黒部川が間近に迫った印象がありました。
背景の絵は、白竜峡、黒部ダムの放水、そして、冠松次郎(この峡谷の探検には、ガイドとし宇治長治郎が同行しています)によって命名された十字峡ですね。いずれも、日本画です。独特の風合いをもつ絵が、こんなにも音楽に似合うんですね。