旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

如浄

2007年11月23日 00時38分21秒 | Weblog
『正法眼蔵』は岩波の「日本思想体系」と中央公論の「日本の名著」の口語訳、それに岩波文庫まで蔵書している。いきなりアカデミックに「日本思想体系」から入ったのがまずかったようだ。「正法眼蔵随文記」はどうにか読み終えたのであるが、どうにも歯が立たない。仕方がないから「日本の名著」の口語訳でお茶を濁そうかと考え始めた矢先、「永平の風 道元の生涯」という著作に出くわした。

当時駒沢大学の副学長をしていた大谷哲夫の著作であるし、挙げられている主要参考著作がさっと200冊であるから、かなり信頼がおけそうだ。なんといっても、参考著作を明記してある点がありがたい。『正法眼蔵』のように難解な著作と取り組む際には大いに役に立つ。

道元と師如浄の問答

道元
「すべての人は生まれながらに仏なのでしょうか。」
如浄
「あらゆる存在は因縁によらず自然にあると考えるのは誤りだ。自我の意識のみをはたらかせて仏もそうであろうと想像するのは、本当はわかってもいないのにわかったといい、さとってもいないのにさとったというのと同じ様な間違いである。」

道元
「小人とはいかなる人のことですか?」
如浄
「小人とは欲が深い人のことをいうのだ。」

道元
「心身がすべての束縛から解き放たれるとはどういうことでですか?」
如浄
「座禅そのものをいうのである。」

如浄
「何のための焼香か?」
道元
「身心脱落いたしました。」
如浄
「身心脱落、脱落身心。」
道元
「自分のさとりの境地は、本物であるかどうかを厳正に評価していただきたい。」
如浄
「印可はおろそかに与えるものではない。」
道元
「おろそかに印可しないとはどういうことですか。」
如浄
「脱落、脱落。」
(身心が脱落したという、そのことすら忘れてしまえと教示し、道元の大悟を認証した。)

活字が大きくて読みやすい。やさしい言葉で難解な道元の思想を明らかにしている。良質な道元の入門書に巡り合うことができた。