庭のはしっこ
ヘイのすぐそばのクリの木は
毎年たくさんクリがなる。
ヘンテコなネコジャラシみたいなのが
たくさん落ちてて
それがクリの花なんだって
おばあちゃんが言った。
うすみどり色のイガが一杯つくと
台風が来ないといいねって
みんなが言う。
たいていは、台風が来てもなんとかなって
秋には茶色のイガが割れて
地面にイガごと、一杯落ちてくる。
中にクリがあるのが見えるのも
全然見えないのもあるけど
おとなの人たちが拾って
ブリキのバケツに何杯もとれる。
イガを割って、中身だけ出すと
茶色のふつうのクリになる。
イガは乾かすと
よく燃えるんだって。
でも、いっぺんだけだけど
クリがまだ枝にあるうちに
すごい台風が来て
一晩で庭中イガだらけになった。
中のクリも小さくて
なんか茶色くなってなかった。
「みずぼ」って言うんだって。
クリの赤ちゃんらしい。
アタシはいつものクリも好きだけど
「みずぼ」は、ナマでも美味しいから好き。
でも、おばあちゃんは
一つしか食べさせてくれなかった。
「痒うなるでの」だって。
いつもはオトナのクリを
固い皮だけむいて、茹でて食べる。
渋皮がついてて、ちょっと渋い。
でもあんまりたくさんとれるから
固い皮もそのままにして
茹だったのをザルに盛って
みんなで食べたりもする。
ずうっと前、アタシがまだ
ほんとに小さかった頃
おかあちゃんの膝に坐って
ザルのクリを食べたことあった。
オトナがたくさんワイワイしてて
でも、小さな板の間にはクリのザルだけ。
おかあちゃんはそこに坐って
膝の上のアタシが指さしたクリを
手にとって丁寧にむいてくれた。
その時のクリは、どれも水っぽくて
全然美味しくなかったけど
一つだけ真っ黄色で
すごーく美味しかったのがあった。
おかあちゃんはあとで
他のオトナの人たちに
「ねねちゃんのえらんだクリは
すごーく美味しかったよね」って。
おかあちゃんがアタシの方見て
笑って言ったから
アタシはすごーくうれしくて
後からおんなじことを
何度もおかあちゃんに言った。
おかあちゃんは
そのたんびに笑った。
でも、クリのせいで
おかあちゃんのカミナリが
落ちたこともある。
近所の男の子たちが
クリどろぼうに来たとき。
うちのクリはとりにくい方だと思う。
友だちが肩車して、ヘイの外から
うーんと手をのばして
やっと枝に届くくらい。
それに、すぐに見つかっちゃう。
1回目はあっという間に
みんな逃げちゃった。
でも、2回目は
向かいのパーマやさんの男の子だけ
顔がわかっちゃったから
おかあちゃんは、パーマやさんに
「文句を言いに」行ったらしい。
帰ってきてから、おかあちゃんは
「取らせて下さいって言えば
いくらでも取らせてあげるのに
コソコソ持って行こうとするから」だって。
でも、アタシのそばでモリシタさんは
「コッソリ取るのが面白いのよね」って
ちっちゃな声で言った。
モリシタさんはクリどろぼう見て
なんだか楽しそうだった。
アタシはお母ちゃんのカミナリのすごさを
男の子たちは知らなかったんだと思う。
それからはクリ泥棒は
うちには来なくなった。
ヘイのすぐそばのクリの木は
毎年たくさんクリがなる。
ヘンテコなネコジャラシみたいなのが
たくさん落ちてて
それがクリの花なんだって
おばあちゃんが言った。
うすみどり色のイガが一杯つくと
台風が来ないといいねって
みんなが言う。
たいていは、台風が来てもなんとかなって
秋には茶色のイガが割れて
地面にイガごと、一杯落ちてくる。
中にクリがあるのが見えるのも
全然見えないのもあるけど
おとなの人たちが拾って
ブリキのバケツに何杯もとれる。
イガを割って、中身だけ出すと
茶色のふつうのクリになる。
イガは乾かすと
よく燃えるんだって。
でも、いっぺんだけだけど
クリがまだ枝にあるうちに
すごい台風が来て
一晩で庭中イガだらけになった。
中のクリも小さくて
なんか茶色くなってなかった。
「みずぼ」って言うんだって。
クリの赤ちゃんらしい。
アタシはいつものクリも好きだけど
「みずぼ」は、ナマでも美味しいから好き。
でも、おばあちゃんは
一つしか食べさせてくれなかった。
「痒うなるでの」だって。
いつもはオトナのクリを
固い皮だけむいて、茹でて食べる。
渋皮がついてて、ちょっと渋い。
でもあんまりたくさんとれるから
固い皮もそのままにして
茹だったのをザルに盛って
みんなで食べたりもする。
ずうっと前、アタシがまだ
ほんとに小さかった頃
おかあちゃんの膝に坐って
ザルのクリを食べたことあった。
オトナがたくさんワイワイしてて
でも、小さな板の間にはクリのザルだけ。
おかあちゃんはそこに坐って
膝の上のアタシが指さしたクリを
手にとって丁寧にむいてくれた。
その時のクリは、どれも水っぽくて
全然美味しくなかったけど
一つだけ真っ黄色で
すごーく美味しかったのがあった。
おかあちゃんはあとで
他のオトナの人たちに
「ねねちゃんのえらんだクリは
すごーく美味しかったよね」って。
おかあちゃんがアタシの方見て
笑って言ったから
アタシはすごーくうれしくて
後からおんなじことを
何度もおかあちゃんに言った。
おかあちゃんは
そのたんびに笑った。
でも、クリのせいで
おかあちゃんのカミナリが
落ちたこともある。
近所の男の子たちが
クリどろぼうに来たとき。
うちのクリはとりにくい方だと思う。
友だちが肩車して、ヘイの外から
うーんと手をのばして
やっと枝に届くくらい。
それに、すぐに見つかっちゃう。
1回目はあっという間に
みんな逃げちゃった。
でも、2回目は
向かいのパーマやさんの男の子だけ
顔がわかっちゃったから
おかあちゃんは、パーマやさんに
「文句を言いに」行ったらしい。
帰ってきてから、おかあちゃんは
「取らせて下さいって言えば
いくらでも取らせてあげるのに
コソコソ持って行こうとするから」だって。
でも、アタシのそばでモリシタさんは
「コッソリ取るのが面白いのよね」って
ちっちゃな声で言った。
モリシタさんはクリどろぼう見て
なんだか楽しそうだった。
アタシはお母ちゃんのカミナリのすごさを
男の子たちは知らなかったんだと思う。
それからはクリ泥棒は
うちには来なくなった。