おとうちゃんもおかあちゃんも
エーガが好きだったんだと思う。
アタシ、初めてみたエーガ
ダイメイぜんぜんおぼえてない。
誰が連れてってくれたのかも
おぼえてないけど・・・
とにかくおねえちゃんは
一緒にいた!
アタシはほんとに小さかったから
きっとおかあちゃんも
いたんだと思う。
うちの裏のエーガカン行って
た~くさんある椅子にすわって
前みるとすごーくおおきなマクがあって
エーガってそこにうつるんだよ。
アタシが初めてみたエーガは
水色の上に黒い線の
ヨクワカラナイ絵があって
そこでおんなじ音楽がなるの。
げんきみたいな
かなしいみたいな
さびしいみたいな音楽。
なんどもなんども
そんな絵と音楽が出てきて
その間にオトナとかコドモとか
いろんなヒトがいたと思う。
アタシは何がどーなってるのか
ぜんぜんわからなかった。
でも・・・絵と絵の間で
みんな汽車とか船に乗ってた。
あちこちおひっこし
してるんだと思った。
アタシもそのとき
おひっこししてきたばっかだったし。
どこに行っても
トーダイが出てくる。
青い海と白いトーダイ。
きれえだよね。いいよね~
音楽きいてるうちに
アタシ寝ちゃったみたい。
次の日の朝、おねえちゃんと
カンゴフさんたちが話してた。
それ聞いてて
アタシはぜんぜん
わかってなかったんだって
わかった。
あの絵は「地図」っていって
あの丸の真ん中に黒い点があって
トゲトゲのついてるのが「灯台」で
あの映画のオトウサンは
そこの灯りが消えないように
番をする人だったんだって。
で、日本中の灯台を回って
旅をしてたんだって。
あのオカアサンが泣いてたのは
きっと悲しいことがあったんだろな。
アタシは何が悲しいのかも
わからなかったけど
みんな「よかったよね~」って。
アタシも早く大きくなって
みんなと一緒に
「よかったねえ」って言いたい。
でも、あとで聞いたら
おねえちゃんも
「お話のすじはようわからんかった」って。
アタシだけじゃなかったんだ。
(ずっと後になって『喜びも悲しみも幾年月』(1957年10月公開)と知った。当時私は3才?姉は5~6才)
エーガが好きだったんだと思う。
アタシ、初めてみたエーガ
ダイメイぜんぜんおぼえてない。
誰が連れてってくれたのかも
おぼえてないけど・・・
とにかくおねえちゃんは
一緒にいた!
アタシはほんとに小さかったから
きっとおかあちゃんも
いたんだと思う。
うちの裏のエーガカン行って
た~くさんある椅子にすわって
前みるとすごーくおおきなマクがあって
エーガってそこにうつるんだよ。
アタシが初めてみたエーガは
水色の上に黒い線の
ヨクワカラナイ絵があって
そこでおんなじ音楽がなるの。
げんきみたいな
かなしいみたいな
さびしいみたいな音楽。
なんどもなんども
そんな絵と音楽が出てきて
その間にオトナとかコドモとか
いろんなヒトがいたと思う。
アタシは何がどーなってるのか
ぜんぜんわからなかった。
でも・・・絵と絵の間で
みんな汽車とか船に乗ってた。
あちこちおひっこし
してるんだと思った。
アタシもそのとき
おひっこししてきたばっかだったし。
どこに行っても
トーダイが出てくる。
青い海と白いトーダイ。
きれえだよね。いいよね~
音楽きいてるうちに
アタシ寝ちゃったみたい。
次の日の朝、おねえちゃんと
カンゴフさんたちが話してた。
それ聞いてて
アタシはぜんぜん
わかってなかったんだって
わかった。
あの絵は「地図」っていって
あの丸の真ん中に黒い点があって
トゲトゲのついてるのが「灯台」で
あの映画のオトウサンは
そこの灯りが消えないように
番をする人だったんだって。
で、日本中の灯台を回って
旅をしてたんだって。
あのオカアサンが泣いてたのは
きっと悲しいことがあったんだろな。
アタシは何が悲しいのかも
わからなかったけど
みんな「よかったよね~」って。
アタシも早く大きくなって
みんなと一緒に
「よかったねえ」って言いたい。
でも、あとで聞いたら
おねえちゃんも
「お話のすじはようわからんかった」って。
アタシだけじゃなかったんだ。
(ずっと後になって『喜びも悲しみも幾年月』(1957年10月公開)と知った。当時私は3才?姉は5~6才)
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