もうひとつの部屋

昔の記憶に、もう一度会える場所にしようと思っています。

ねねの日記⑨ ・・・ 落しもの見つけた!

2014-11-02 21:03:21 | E市での記憶
学校の裏の方に
すごくきれいなお庭がある。

前に、おねえちゃんが
「ひみつだよ」って教えてくれた。

お庭には、こどもは
入ったらいけないみたい。

探したけど
入り口もなかった。

おねえちゃんが教えてくれたのは
緑の垣根の破れ目だけ。

そこから見えるお庭は
なんだか外国のお城の中みたい。

小川があって
小さなお池もあって
きれいな花が浮かんでて・・・

「あれはスイレンっていうんよ」

おねえちゃんは
なんだか何でも知ってるみたい。

それから後も
アタシはお庭が気になって
ヤッちゃんやヒロちゃんと見に行った。

二人とも「きれえやね~」って言った。

アタシは見てると
なんだかドキドキした。
「こらあ~!」って
誰かに怒られそうな気がして。

何度目か、ヒロちゃんと行ったとき
いつもすわる垣根のそばに
モミガラみたいなのが、山になってた。

一緒に「山」を崩してみたら
大きなリンゴがゴロンって出てきた。

ヒロちゃんもアタシもびっくりした。

「どーする?」って顔で
ヒロちゃんがアタシの方を見る。

どうしよう・・・

このまま持って帰ったら
アタシたち、ドロボウになっちゃうし。

でも、置いていくのは
モッタイナイ気がするし。

二人でしばらく考えたけど
どうしていいかわかんない。

・・・そのとき、突然ひらめいた。

「警察に持って行こう!」

お庭は警察の近くにあって
アタシはこの間、学校から
見学に行ったばっかり。

持ってって、おまわりさんに見せたら
もしかして「あんたたちにあげる」とか
言ってくれるかもしれない。

ヒロちゃんはちょっと困ってたけど
アタシはわしわし歩いていって
警察の玄関はいって
入り口の人に

「このリンゴ、落ちてました」

入り口のおまわりさんは

「あそこの人に言いなさい」

おまわりさんたちが見てる中
知らん顔して歩いて行って
部屋の奥の方で、机に向ってるおじさんに
もう一度言った。

「このリンゴ、道ばたの
モミガラの中にありました」

「ひとつだけ?」

アタシとヒロちゃんがうんって言うと
おじさんは(思った通り!)

「そんなら家に持って帰りなさい」

やった~~!!!

アタシとヒロちゃんは
走ってうちに帰った。

ヒロちゃんが持ちたいって言うから
リンゴはヒロちゃんに渡した。

アタシよりひとつ年下のヒロちゃんは
危なっかしくて落っことしそうで
アタシは気が気じゃなかったけど。

うちに着いてから、もう一回
みんなにリンゴの話をした。

みんなが「えらいね」って
ほめてくれた。

りんごは「立派なスターキング」で
おばあちゃんが包丁で切ってくれて
ヒロちゃんと半分こしても、まだ
みんなで食べられるくらい大きかった。

でも・・・

だれにも言わなかったけど・・・

「そうだ、警察に行こう!」って思ったときから
アタシって、もしかして
ちょっとイヤな子かなあ・・・って思った。

リンゴは、思ったとおり
アタシたちのものになったけど
「いい子」のフリしたんやもん。

おまわりさんたちが、みんな
「なんや?あれ」って顔して見てる中
「大丈夫!」って知らん顔できるアタシは
やっぱりちょっと「厚かましい」子なんかも。

リンゴはすごーく美味しいって
みんな言ってくれたけど
アタシは、それほどじゃない気がした。

ほんとはどーしたら良かったのかなあ。

でも、仕方なかったよね。



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