バリ島に住む友人のヴィラに滞在したのは2年8か月ぶりだった
部屋には友人の描いた絵が飾られたり、窓に網戸が取り付けられたりして前より快適になり、
チェコやオーストラリアからの長期滞在者たちが寛いで暮らしていた
耳と笑顔の大きな白い犬プトゥ、風のように動く猫のプスパ、顔なじみの人たちとの懐かしい再会、そして変わらない風景
一方で、17年前から15回ほど行き来してきた思い出の場所に新しいお店やホテルが建ち、初めて知り合う人たちもいて、
離れている間に流れていたもう一つの時間とつながる想いがした
昨日、幼稚園から子供を連れて帰る途中の友達から電話をもらった
「わたしも代わって」と受話器の向こうで話し始めた女の子は、
「明日クッキー焼くから家に遊びに来たら
おもちゃもたくさんあるよ
電車にいくつ乗ったらこられる?
虫が入ってくるからドアは閉めとくけど
鍵は開けとくから」
と、ちいさなしっとりした声で言った
わたしは先週父の一周忌を終えたところで、
それまで父から遠ざかっていくように感じていた時間が
つかの間の一年を境に、また会える時へ少しだけ向きを変えた気がした
閉まっているドアに鍵がかかっていないことを知らされたみたいに
バリの一日は以前の滞在と同じく鶏の目覚ましで始まった
体調をくずした一日を除いて友人と朝、旅行者や海外からの移住者と気さくにおしゃべりできるカフェに出かけた
いくつかのメニューを試してお気に入りになったのはフラットホワイトという珈琲
父母、息子さん三人で営む屋台は、彼らの調和した動きが心地よく、テーブルはいつ行ってもほぼ満席だった
夕食時、野菜炒めと炒めご飯にしようと考えながら、屋台の集まる市場に入った