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東京目黒から山梨へ育児のためにお引越し。40代高齢出産ママの雑記帳です。

方丈記(鴨長明)

2010年10月06日 | 本のこと


金木犀の良い香りに、黄色く色づいた落ち葉。

目黒図書館に行く途中、小さな秋を発見!
まだまだ日中は暑いときもあるけど、季節は着実に移り変わっている。



***


季節の境目、特に夏から秋へというドラマチックな変わり目にオススメの一冊が『方丈記』。


古典というと何か高尚なことが書いてあるかのように錯覚しがちだけれど、
『方丈記』は800年ほど前に生きた50代のおじさんが、世の中のことや自分の心の中を綴った随筆。

ただし、鴨長明はただのおじさんではない。
下鴨神社のトップの家に生まれた正真正銘のおぼっちゃま。
音楽にも歌にも秀でた文化人。


行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、
かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし。世の中にある、人と栖と、またかくのごとし。



冒頭のこの一節はあまりに有名で古典音痴のアタシでも知っているぐらいだが
改めて読みなおしてみると、なんとリズムの良い文章か。


知らず、生まれ死ぬる人、何方より来たりて、何方へか去る。また、知らず、仮の宿り、
誰が為にか心を悩まし、何によりてか目を喜ばしむる。その主と栖と、無常を争ふさま、
いはば朝顔の露に異ならず。或いは露落ちて花残れり。残るといへども朝日に枯れぬ。
或いは花しぼみて、露なほ消えず。消えずといへども夕べを待つことなし。



方丈記の根底を流れるのは「無常観」(「無常観」と「無常感」は異なるらしい)。
川の流れや朝顔の露など、自然に例えて無常観を説明しているが、やはり、
一番いいたいのは、人の生や住居等がいかに儚いものであるかということ。


そもそも、一期の月影傾きて、余算の山の端に近し。たちまちに三途の闇に向かはんとす。
何の業をかかこたんとする。仏の教へ給ふおもむきは、ことに触れて、執心なかれとなり。
今、草庵を愛するも、とがとす。閑寂に着するも、障りなるべし。
いかが、要なき楽しみを述べて、あたら時を過ぐさん。



しかし、達観した人間像というのは、どうも長明には当てはまらないらしい。
5大生き地獄を経験し、実体験に基づいた無常観を養い行動した長明だが、
山奥の小さな草庵に執着したり、自慢したり、反省したり、とても人間臭いやつである。




角川ソフィア文庫・ビギナーズクラシックスシリーズの『方丈記(全)』は
現代語訳と解説付きで気軽に読める。オススメ。

方丈記(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

 



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