声無くも目に確かなり初笑 大野鵠士 (獅子吼2月号/主宰24句)

2022年02月17日 | 主宰句・主宰句鑑賞
【獅子吼994号】令和4年2月号 主宰24句

~初笑~


もどり香のまろき珈琲冬うらら
 ※季語 冬うらら/仲冬・晩冬 (主季語 冬日和)
 ※もどり香
  食品を口に入れて噛んだときに、香りの成分がのどの奥から鼻に抜けて感じられる口中香

マフラーを巻き余りたる齢かな
 ※季語 マフラー/三冬 (主季語 襟巻)

片時雨やの字平たく崩し書く
 ※季語 片時雨/初冬 (主季語 時雨)
     一方では時雨が降り、一方では晴れている事

潤みたる街の灯りよ漱石忌
 ※季語 漱石忌/仲冬 12月9日

轟轟と時去りゆくや花八手
 ※季語 花八手/初冬 (主季語 八手の花)

一本の冬木神々しく仰ぐ
 ※季語 冬木(ふゆき)/三冬

初雪や穢れたる世を清むべく
 ※季語 初雪/初冬

  回想
雪の駅融雪灯の炎揺れ
    ポイントが氷雪により作動不能に陥らぬよう、現在は電熱式を採用。
 ※季語 雪/三冬

牡蛎鍋を食ふやいよいよ饒舌に
 ※季語 牡蛎鍋(かきなべ)/三冬
  
討入りの如き眦藥喰
 ※季語 薬喰/三冬 
  冬に体力をつけるために、鹿・猪・兎などの肉を食べる事。
  これらを食べることを厭った時代があったため、薬と称して食べたりしていた。
 ※眦(まなじり)

伏す虎と見ゆる山々冬至けふ
 ※季語 冬至/仲冬

愛を囁くか聖樹の点滅は
 ※ 季語 聖樹/仲冬 (主季語 クリスマス)

極月や天へ電光ニュース消え
 ※季語 極月/仲冬・晩冬 (主季語 師走)

  奈良八句
数え日の一つ二つを奈良泊まり
 ※季語 数え日/仲冬

電車来る耳成山の眠る裾
 ※季語 山眠る/三冬
 ※耳成山(みみなしやま)

冬ざれの只中に城郡山
 ※季語 冬ざれ/三冬
 ※郡山(こおりやま)

冬雲雀堀を隔てて鳴き交はす
 ※季語 冬雲雀/三冬
  冬の雲雀。春を待つ心が秘められていて風情がある。

釜鳴りか否凩ぞ多聞山
 ※季語 凩(こがらし)/初冬 木枯とも
 ※釜鳴り
  釜で湯を沸かす時や飯を炊く時に、釜がうなるように鳴る事。
  何かの前兆と感じ、またはその音によって吉兆を占った。
 ※多聞山城
  奈良市多門町に所在した戦国期の平山城。
  石垣は郡山城に運ばれて、ほとんど遺構は見られない。

冬鴉陵に声落としけり
 ※季語 冬鴉(ふゆがらす)/晩冬 (主季語 寒烏・かんがらす)
 ※陵(みささぎ) 天皇、皇后、皇太后、太皇太后の墓所

女子大の門は木造り冬休み
 ※季語 冬休み/仲冬

酒の名のそらみつ愛でて年の暮
 ※季語 年の暮/仲冬

初寝覚いの一番に目薬を
 ※季語 初寝覚/新年 上

神君と同じ干支なり寅の春
 ※季語 寅の春/新年・全 (主季語 初春)
 ※神君 江戸時代、徳川家康の死後の尊称

声無くも目に確かなり初笑
 ※季語 初笑/新年・上

2 コメント

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牡蠣鍋には (きりぎりす)
2022-02-18 16:38:36
やっぱり冷酒でしょうか。
団欒、ぷっくり太った牡蠣が冬の食卓を温めます。
メガネが曇ります。
飲んべえはネ。
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牡蛎鍋の季節も (健人)
2022-02-19 10:45:18
そろそろ終わりでしょうか。
美味しそうなコメントでしたね。
N会でもゆっくりとこんな機会を持ちたいものですね。

三回目の鑑賞文は、以下の4句を選んで書きました。
3月号に掲載されるので、それ以後にブログアップします。

もどり香のまろき珈琲冬うらら
雪の駅融雪灯の炎揺れ
数え日の一つ二つを奈良泊まり
酒の名のそらみつ愛でて年の暮
※「そらみつ」は奈良の地ビールの名前で「大和」に掛る枕詞でした。
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