春灯の器となりぬ終電車 大野鵠士 (獅子吼5月号/主宰24句)

2022年06月14日 | 主宰句・主宰句鑑賞
【獅子吼997号】 2022年5月号 主宰24句
春灯の器 大野鵠士


春暁やゆらぎゆらげる白湯の湯気
・季語 春暁/三春

浮上してみればもう春鳰
・季語 春/三春
・鳰(かいつぶり)

なかんづく花の兄煽る疾風かな
・季語 花の兄(はなのえ)/初春 梅の傍題

日本のリズムに鳴けり匂鳥
・季語 匂鳥(においどり)/三春 鶯の別名

吹く風に皺もやはらか水温む
・季語 水温む/仲春

朝寝してブランチとなる目玉焼
・季語 朝寝/三春

唇に一筋刻み海苔の美女
・季語 海苔/初春

コンテナの上にコンテナ草萌ゆる
・季語 草萌ゆる/初春 「下萌」の傍題
  
城垣に春一番の体当り
・季語 春一番/仲春
・城垣(じょうえん)
  
絵踏なほ今も昔のことならず
・季語 絵踏/初春

荒東風をひねもす城の鯱泳ぐ
・季語 荒東風(あらごち)/三春  「東風(こち)」の傍題

みづがねの空しろがねの山雪解
・季語 山雪解(やまゆきげ)/三春 「雪解(ゆきどけ、ゆきげ)」の傍題
・みづがね・・・水銀

緩みたる胸のボタンよ卒業期
・季語 卒業期/仲春 「卒業」の傍題
 
鉄橋の下潜りけり初燕
・季語 初燕/仲春 「燕」の傍題

春陰やこけしの眉は憂ひ帯び
・季語 春陰/三春 曇りがちな春の天候

足下にさしも草あり伊吹山
・季語 さしも草/三春 「蓬(よもぎ)」の傍題(別名)

木瓜咲いて俳句は二流こそよけれ
・季語 木瓜(ぼけ)咲く/晩春 「木瓜の花」の傍題
 
青といふ余白ありけり春の空
・季語 春の空/三春

パセリ一摑み弥生の森をなす
・季語 弥生/晩春 陰暦三月の異称。ほぼ陽暦四月にあたる。

開かれて海の真青や春障子
・季語 春障子/三春

掌に広がる野の香蓬餅
・季語 蓬餅/三春

声おぼろ翁の顔は髭の中
・季語 おぼろ/三春 朧・・夜の季語、昼は霞

春灯の器となりぬ終電車
・季語 春灯/三春

ときめきに身を浸しては花を待つ
・季語 花/晩春

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