失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「忘れないわ」 1991年、「『大往生』より 生きるものの歌」 1995年 中島啓江

2014-12-28 | 
中島啓江の8㎝はあと「昼下がりのパーク・アベニュー」(1990)が存在するようだ。

左、2ndシングルと思われる「忘れないわ」。

①忘れないわ
作詞・作曲:加藤登紀子、編曲:菅野よう子
菅野よう子アレンジの華麗なストリングスに導かれ、中島さんの余裕綽々の歌声が現れる。スローなシャンソンテイストのメロディは、昔からあったような懐かしさを感じさせる、美しくも哀しい堂々たる名曲。検索しても加藤登紀子自身の歌唱はないようだが、なんで歌わないんだろ?この声量、表現力の前にシンガーとして敵わないと思った?いやいや、おトキさんが歌えばまた違う渋みが出て代表曲になりそうな完成度だと思うのだが。

②じらさないで
作詞・作曲:加藤登紀子、編曲:菅野よう子
こちらはアップテンポでドスをきかせる中島さんのコミカルサイド。軽やかにスウィングするリズムと、重量感のある歌唱のミスマッチを楽しむ。

定価900円、中古で22円(正確には5枚で108円)。
じつは今月買ったばかり。ジャケのコピー「お茶目でいつも元気いっぱい そんな“わたし”の中にもひとりの女がいる」。アルバム『わたし』(1991)からのシングルカット。



右、永六輔の著作「大往生」(1994)のテーマ曲。

①生きるものの歌
作詞:永六輔、作曲:中村八大、編曲:上柴はじめ、ピアノソロ:中村八大
オリジナルはロクスケシンガーズ、1975年。その名のとおり永六輔自身が歌ったようだ。加山雄三も歌っている(YouTubeで本当に若いころの若大将が歌っている姿が確認できる)。ドラマチックに歌い上げるほかないバラード作品。永六輔はどう歌ったのだろう?この中島啓江ヴァージョンは、いろんな意味で中島さんのスケールのでかさを印象づける名唱。ただ上手い人が卒なく歌っているだけではない、生き様を見せつけられるような深みを感じる圧倒的な「歌」なのだ。歌に選ばれた歌手。もちろん永六輔の指名なのだろう。

「私がこの世に生まれ 私がこの世を去る」なんてシンプルな歌詞が、今聴くとどうにも重い。

間奏のナレーションも中島さん。ちょっと長いけど引用。

もし世界が平和に満ちていたとしても
悲しみは襲って来る
殺されなくても命は終り
誰もがいつか別れてゆく
世界がどんなに平和でも
悲しい夜は来る
誰もが耐えて生きている
思い出と歌が
あなたを支えていくだろう

普遍性をもった歌詞と、がっちりかみ合った中村八大のメロディ。中村八大はこのシングル発売の5年前、1992年に亡くなっている。アウトロで約1分のピアノソロを聴かせるのは中村八大。これは奇跡的に本人演奏のテープが発見され、はめ込んだらしい。

今年10月にデューク・エイセス結成60周年記念曲としてこの曲がシングル化された。デューク・エイセスは1975年からこの曲を歌っており、今回初スタジオ録音したとのこと。永六輔が語りで参加!


②生きるものの歌(女性合唱ヴァージョン)
編曲:上柴はじめ
わりと主張の強い系の女性たちが歌う合唱ヴァージョン。ナレーションは中島啓江のまま。

③④カラオケ

定価1000円、中古で100円。
岩波新書のブックカヴァーを模したジャケット。下3分の1の帯のように見える部分は和田誠による中島啓江&永六輔のイラスト。



先月57歳で急逝された中島啓江さん、ご冥福をお祈りします。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿