やっぱり本も好き

忘却率がUPしているのでメモとして

憲法と自衛隊

2020年05月04日 12時46分25秒 | 
「サル化する世界 内田樹」
 改憲派の人々は憲法9条と自衛隊の存在の間に齟齬があることを耐え難いと感じているようであり しばしばこんな国は日本以外にないと言い立てるけれども それは違う。
 私が知る限り 憲法の規定と軍隊の存在の間にもっとも深刻な乖離を抱え込んでいる国はアメリカ合衆国である。アメリカ合衆国憲法はそもそも常備軍の存在を認めていない 海軍は認めているけれど陸軍は必要なときに召集されるべきものであって常備軍であるべきではないというのが建国の父たちの揺るがぬ確信。アメリカ建国の正当性を保証するのは 抵抗権と革命権。
この憲法はその後改定されないまま今に続いている。
常備軍を持たないことを規定した憲法を持ちながら アメリカは世界最大の軍事力を誇っている
ここには致命的な齟齬があるのだけれど 現実と合っていないから憲法を改定しろというアメリカ市民はいない。
アメリカというのは 一つの アイディア。
アメリカは何のために存在する国なのか ということをアメリカ人ひとりひとり自分に問う義務があり権利がある そのときの手がかりになるのが 憲法であり独立宣言。
 日本国憲法も同じである。そこには1946年時点で日本を占領していたGHQのニューディーラーたちのアイディアが込められている
彼らは天皇制を持っている以外はアメリカみたいな国を制度設計したのだと思う
 だから 9条2項の陸海空軍その他の戦力はこれを保持しないという条項を書いたときに 彼らの脳裏にあったのは合衆国憲法だった というのはありそうな話である。
 私は憲法と自衛隊の齟齬は 憲法起草時点でアメリカ人が日本の軍事について夢想していたこととその後の現実の齟齬として理解すべきではないかと思う。
   こういうことを 子供の頃から 社会科の時間で教えてくれたら
   憲法に興味が持てるようになりそうです。

憲法のできた時

2020年05月04日 09時39分54秒 | 
「サル化する世界 内田樹」【加藤典洋 9条入門 参考】
ドイツやイタリアでは憲法がゆっくり時間をかけて検討され起草されたが 日本では憲法制定権限をもつ極東委員会が発足する寸前に1946年3月6日に天皇制の存続と戦争放棄という条項をもつ「日本政府案 起草したのはGHQ 日本政府に開示されたのは2月13日」が発表された。GHQには憲法制定権はないから 建前上これは「日本国民の自由に表明せる意思に従い」起草されたものである。 マッカーサーがなぜ憲法起草を急いだのか?  加藤典洋によると理由はきわめて実利的なもの。
天皇制を利用すると占領コストが劇的に軽減することが確かだったから。天皇制を廃したり天皇の戦争責任を裁判で追及した場合には 絶望した一部の日本軍兵士が占領軍に敵対し 多数の米軍兵士の長期駐留が必要になる可能性があった。
マッカーサーにはタイムリミットがあった 1948年の大統領選挙で 共和党の大統領候補に指名されることを狙っていたから。天皇制の存続につよい懐疑のまなざしを向ける極東委員会の国々に 天皇制は残すという決定を呑み込ませるためには 極端な戦争放棄条項 すなわち個別的自衛権すら放棄するという条項を憲法に書き入れるしか手立てがなかった。
 極端な戦争放棄条項には当時の政治家や憲法学者たちが熱狂したけれど その多くはその後 掌を返したように解釈を覆した。
 なぜ先帝が鎮魂と慰謝という象徴的行為を象徴天皇の本務であるとして あれほど強調されてきたのか その理路が逆方向からわかってくる。
   内田樹さんのお話は優しいまなざしにあふれています
   2度読み3度読みしてすんなり心に入ってきました。
   次は 憲法と自衛隊 です。