「サル化する世界 内田樹」
改憲派の人々は憲法9条と自衛隊の存在の間に齟齬があることを耐え難いと感じているようであり しばしばこんな国は日本以外にないと言い立てるけれども それは違う。
私が知る限り 憲法の規定と軍隊の存在の間にもっとも深刻な乖離を抱え込んでいる国はアメリカ合衆国である。アメリカ合衆国憲法はそもそも常備軍の存在を認めていない 海軍は認めているけれど陸軍は必要なときに召集されるべきものであって常備軍であるべきではないというのが建国の父たちの揺るがぬ確信。アメリカ建国の正当性を保証するのは 抵抗権と革命権。
この憲法はその後改定されないまま今に続いている。
常備軍を持たないことを規定した憲法を持ちながら アメリカは世界最大の軍事力を誇っている
ここには致命的な齟齬があるのだけれど 現実と合っていないから憲法を改定しろというアメリカ市民はいない。
アメリカというのは 一つの アイディア。
アメリカは何のために存在する国なのか ということをアメリカ人ひとりひとり自分に問う義務があり権利がある そのときの手がかりになるのが 憲法であり独立宣言。
日本国憲法も同じである。そこには1946年時点で日本を占領していたGHQのニューディーラーたちのアイディアが込められている
彼らは天皇制を持っている以外はアメリカみたいな国を制度設計したのだと思う
だから 9条2項の陸海空軍その他の戦力はこれを保持しないという条項を書いたときに 彼らの脳裏にあったのは合衆国憲法だった というのはありそうな話である。
私は憲法と自衛隊の齟齬は 憲法起草時点でアメリカ人が日本の軍事について夢想していたこととその後の現実の齟齬として理解すべきではないかと思う。
こういうことを 子供の頃から 社会科の時間で教えてくれたら
憲法に興味が持てるようになりそうです。