スタインウェイ・アンド・サンズと遊ぶ

名作のピアノですね。これが私の高校の視聴覚室にあったんです。当時私は、今もそうかもしれませんが、変な女生徒でした。成績もそれほど良くなくて、というか気に入った科目しか頑張らなかったので、成績にむらがありすぎました。でもなんていうか、勉強をなめてかかってたので、その気になればそれなりの点数は取れるとうぬぼれてました。すごく傲慢でした。でも、あれくらいの年頃ってそんなふうに、理由も無く自信もってたりすることってありませんか？

努力さえすれば成績は上がるって、訳のわからない自信があったのです。実際それですごく難しい問題を出す教師のテストの上位に食い込んだこともあったりして、それが私に過剰な自惚れを植え付けたのかもしれませんが・・・・ああ恥ずかしい・・・

で、スタインウェイ・アンド・サンズなんですが、昼休みの視聴覚室には誰も来ません。そこにそのグランドピアノは置いてありました。選択科目は3年間美術だったので、音楽室には入ったことの無い私でしたので、ピアノはヤマハかカワイくらいしか知らなかったのですが、音楽室にはそこの部員とかがいますんで、私は入れませんし、入る気持ちもありませんでした。

分厚いカーテンの隙間から陽が差し込んで、うっすらと埃が漂っている、ひっそりとした視聴覚室に埋もれたようなピアノを見つけた時の私は、「あれに触ってみたい」でした。

一緒に昼を過ごす友人がいなかったわけではありません。部活動をしていなかったわけでもありません。
でも、視聴覚室には、誰も来なかったのです。

ピアノなんて習ったことも無い、そんな私が椅子にかけて鍵盤の蓋を開けました。Steinway & Sonsと書かれた蓋の裏を見て
どこのピアノだろう？ドイツかな～？う～ん無知とは怖ろしいものです。
そして、私はたどたどしい指使いで、音を出しました。出てきた音は・・・・割れて、スプリングが壊れたような、とんでもない音でした。
ハンマーも弦も相当いかれてる代物でした。音楽室に置かれていないのがよく判りました。
でもちゃんと音階は出るのです。そしてそのボロピアノはそこに存在している・・・・

誰かに見つかるまで、私はそのピアノを弾きに行きました。簡単な楽譜を持って行き、ビートルズやジョンレノンなどのポップスやロックを弾いたりしていました。たまにエリーゼの為にとかなんかも・・・・

後でそんなすごいピアノだったと知って驚いたのですが、あのボロSteinway & Sons,はあの時、確かに私と一緒に遊んでくれました。
少し変人な女子高校生の昼休みと放課後の思い出です。誰かに聴かれてたら本当に恥ずかしいです。
今ならもう少しまともに弾けるでしょうか・・・・あのピアノは今はどうなってるでしょうか・・・・きっともうこの世には存在してないでしょうね。
でも確かに私はSteinway & Sons,に遊んでもらいました。良い友達でした。