新型コロナウイルスのワクチン接種が夕方に予定されていて、時間が計れる行動しかできない土曜日ということで、午前中に映画でも観に行くかということにした。
水俣病のドキュメンタリー映画が封切られたと知っても、娯楽系で名を馳せたジョニー・デップ主演の外国資本制作の洋画と聞くと、1980年代にかけて日本の経済成長の影響で煮え湯を飲まされた西欧諸国の目線で、日本が急成長する裏側にこんな酷い歪があったのだとほじくり返して告発するような、今や国際競争力を落として弱ってしまっている"泣き面"の日本に"蜂"の一刺しをして懲らしめてやろうという意図なのではと早合点して、スルーしそうになった。
しかし少しして、中学生の頃に、富山県神通川のイタイイタイ病について著す本を読んで、公害の悲惨さとともに経済的繁栄の光と影について真剣に考えたことが鮮やかに脳裏によみがえってきて、「MINAMATA。観てみるか」ということになった。
それにしても、汚染水公害については隣県の事案で知るを待たずとも、地元の新潟県内において"第二の水俣病"が問題となっていたのに、その詳細は小中学校での学びや日常生活の中では殆ど知り得ることが無かった。公と経済成長時代というのは正にこうした状況だった。我が身となれば深刻でもどこか遠い所の話には目もくれずに豊かな明日だけを皆が見据えて暮らしている感じだった。
果たして映画「MINAMATA ーミナマター 」は、日本全国に高度成長を波及させた猛進力と、そこから生まれた歪が成長そのものを社会的バランスへの自律へ向かわせようという過程を、滲むように感じさせた。映画のために撮られたカラー映像と織り込まれる当時の実際の写真や動画のモノクロ映像が、過去を省みることで現代を補整しようとするかのようなせめぎ合いにも見えた。
写真家をモチーフにして、一人の人間としての社会問題への関わり方や生き様を表すことが本作品の主眼とすれば、大いに胸に迫るものを得られた鑑賞であった。
ただ、欲を言えば、汚染水排出企業の背景にあった成長の恩恵の享受とその代償について考えを深く至らせる何かがもう少しあれば…。
ネタばれはしたくないのでここでは印象論のみで止めておきます。
(ほのぼの鑑賞・映画「MINAMATA ーミナマター 」2021.9.25終わり。「ほのぼの鑑賞・テレビドラマ2022.1.30」に続きます。)
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