新潟久紀ブログ版retrospective

県庁新採用が驚く工業用水道ドッキング計画編(後編)

<2県庁新採用が驚く工業用水道ドッキング計画編(後編)>--------------------------

●工業用水ドッキング計画
 しかし新旧の工業用水道施設は10㎞程離れている。何と言っても最大1㎞の川幅を誇る阿賀野川がその間を流れている。国道橋に架設するにしても工事の足場作りや交通対策など技術的にも費用的にも夢物語だと直感した。しかし平素慎重派の初老の技術職は最新の技術でそれはクリアできると明言した。
 「シールド工法」。大河川を挟む二つの工業用水道をつなぐにあたり、川底の地下に大型のドリルでトンネルを掘り進めながら大口径の管を形成していくという。大流量の河川の中に足場構築も要せず、新潟市の大動脈国道の交通規制にも及ばない。新技術の凄さが睡眠不足の頭に強烈に響いた。
●3人目の最後の係長
 新旧二つの工業用水道事業を接続する企画は「ドッキングプロジェクト」と呼ばれ、これを国に認めてもらうことにより新施設の売水先を旧施設の顧客で、旧施設の老朽化を新施設で、相互に補おうとのものであったが、当初建設計画とは激変する内容が国に認められるかは未知数であった。
 古典的資質の年輩係長が前代未聞の課題対応に耐えうる見込みはなく、私は新採用僅か3年間で3人目の係長を迎えることとなった。県庁の中で仕事の難度と量で最もキツいといわれる財政課でのバリバリの予算査定担当官が、係長に成り立てでいよいよ投入されることになったのだ。
 過酷職場の財政課上がりの若い係長は着任早々飛ばす。私が作成する資料の構成や不備を次々指摘し、拙い記述は定規をパチパチ叩いて箇所を指し示しながら「君の日本語は解らない」と手厳しい。突き放し一辺倒かと思いきや、残業で終電を逃した夜は「今晩は君のアパートに泊まるよ」とお構いなしだ。
 始業から退庁25:00過ぎまで一日の2/3以上!!を一緒に過ごした係長は終電過ぎたと末席職員の8畳一間のアパートに押し掛けてきた。「寝る前に必ず聴く」として持参したCDを我が宿のプレイヤーで演奏する。昼間のギリギリした雰囲気が切り替わる。遠慮のなさで親しみを現す蛮カラ世代のようだ。
 やり手係長の指摘や指導は辟易とする細かさであったが、感覚的に物事をとらえ直線的に対応案を結論づけがちだった私にとって、論点課題を漏れなく重複無く抽出して客観性ある根拠と妥当性により対応代替案を整理することが、組織的に的確な判断を得るための重要さを実践的に学ぶ場となった。
●封建的な国担当官との交渉
 私から見て事務役人として万能に見えた新任係長も、封建的な権限をかざす国地方局担当官には相当手こずらされた。工業用水道整備計画変更申請書案の相談にあたり、本筋とずれた文言への難癖などで時間を徒費させてくる。口答えしようものなら「許認可庁担当官の私に対して無礼だ」と時代劇だ。
●国との協議は"空中戦"へ
 国との協議は窓口担当官の根拠不明瞭な意向に左右され隘路を彷徨う日々。噂に聞いた典型的裁量行政の当事者に陥る中で国と地方の上意下達的関係について問題意識が高まったものだ。切れ者係長をしてものデッドロックに、当初は実務担当の見守りに徹していた課長はついに動き始めた。
●本省との直接交渉
 国からの出向であった課長はいわゆるキャリアではなく退職まで県で…等と話していたが、年間1/3近くは東京中心に出張して省庁等との人脈維持に努めていた。前代未聞の工業用水ドッキング計画について窓口地方局でなく本省の幹部に直接働きかけて大筋の了解を得たのだ。俗に言う空中戦だ。
 国地方局(出先機関)担当官との攻防に疲弊する私へ課長は「○○ちゃん、その件はアレしてこうして何しておいたから、後はよしなに」。こそあど言葉の多い課長に慣れた私は「本省幹部と大筋の手打ちをした」との趣旨が即座に飲み込めた、頻繁な不在で補佐を悩ましせていた課長の上京は大きな成果をもたらした。
●内諾を得て新橋で打ち上げ
 本省幹部了解の神通力は強力で計画変更は認可ありきの流れとなったが、頭ごなしが面白くない窓口担当官は実務的にはきっちり詰めてもらうとして細部にわたる指摘を重ねた。最後の1月は週に3回は上京して持参したワープロで資料を夜中まで直すなど手続き期限ギリギリでまで嫌がらせは続いた。
 過去例の無い協議内容にて異例の本省での説明に臨むと、国窓口担当官のこだわり部分には触れもせず、担当幹部は内諾した。「前代未聞の計画変更案だからこそ前例にとらわれず判断できる」との幹部の弁に、役所仕事の皮肉だなあと思いつつ、国との長い攻防はあっけなく終わったのである。

(回顧2終わり。「3県庁新採用でお役所仕事に呆然とするも乗り切れ!!編(前編) 」に続きます。)

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