新潟久紀ブログ版retrospective

財政課4「特命1「会合ガイドブック」(その2)」編

●特命1「会合ガイドブック」(その2)
~徒労のお蔵入り~

 ワーキングによる進め方は、私の上司である係長とその上司である企画主幹に順次伺って了解を取り付けた。もともとの特命指示を出した部長は年度替わりで交代していたが、指示済み事項の実務的な進め方ということでしかないので、新部長には伺うことまではしなかった。新部長は前職での私の上司でありどこか通じているような気持ちがあったので、作業の結果として指針案が出来た段階で伺えば良いと思い込んでいた。この対応は後悔につながることになるのだが…。
 当時の財政課は、良くも悪くも全庁を取り仕切る強力な立場を持っていたので、末席主任の私ごときの仕切りによる声掛けであっても部局の総務担当係長さん達がワーキングに参画してくれた。意見交換を始めると「こんな例はアウトかセーフか」といった具体事例続出だ。1か月ほど掛けて協議する中で、汎用的な指針というよりも具体事例をできるだけ掲載し、各々における公費支出適否の論点や適切な対応を付記した「事例集」という形態が良いのではということになった。掲載した事例と類似性のない事例があれば追加したり時代遅れになり行くような考え方などは適宜加除修正したりと、メンテナンスしていける冊子が良いということになった。
 出先機関分も含めて全庁的に、会合参加の適否について悩ましい事例を問い合わせ、各々について私が適否判断の論点や対応推奨例のたたき台を作ってワーキングメンバーの意見を聞き、成案化していくという作業が1か月ほど過ぎると、数十ものケースを取りまとめた事例集の素案が出来上がってきた。ただ、いきなり目次と具体例を説明する文字の羅列では、何か取っつきにくい。ならば、"食糧費の不適正支出でさんざん煮え湯を飲んだ直後のタイミングなのに何故に今この「事例集」が求められるのか"という、ワーキングチーム結成の契機となった"あの議論"を本編への導入として冒頭に記せば、これがより適切で良い判断のためのガイドとして手に取ってもらえるようになるのでは。私の前職でのイラスト入りリーフレットなどの成果品を知るメンバーはそう言って、私が導入マンガを描けば良いと促し、ワーキングでもそれが良いということとなった。
 私は"導入マンガ"のセリフやレイアウトの構成案となる"絵コンテ"の着手に入ったのだが、時はすでに夏季休暇の時期を過ぎて秋の気配が漂い始めていた。萎縮する県職員に積極性を持たせるための事例集ならば発行は早い方が良い。秋が深まると財政課は次年度当初予算編成のための査定モードに突入し、そうなると、こんな事案で部長に伺う時間も取れなくなってくるかも知れない。私は、係長と企画主幹の了解を得て、導入マンガがプロットの段階ではあったが事例集の案を部長に諮ることとした。
 部長と私は、前の職場では室長と部下の関係であり、スタッフ制を敷いていたので末席主任でありながらも部長級の室長とは直接に喧々諤々とやらせていただいた経緯がある。私の独自のイラストやマンガによる職員向け資料作製にも室長は理解があった。事例集の素案はワーキングチームメンバーによる精査を経て内容的にも十分に熟(こな)れたものになっていた。僭越ではあるが、問題なく了解いただけるものと思って部長室へと臨んだのだが…。
 「何でおまえがこんなことをやっているのだ」。開口一番、部長は思いがけない反応を私に示した。前部長からの御下命に基づく継続的な作業であることと、目的や趣旨、経緯などを説明したのだが、「これはおまえの仕事ではない。やるにしても査定チームがやらなくてはならない。飲食を伴う会合のあり方などを示した平成10年5月15日付け全部課長宛ての総務部長通知は財政課の査定チームが担当したもの。そこに連動する指針や事例集も同担当が取りまとめないと組織としての仕事に不整合などを起こしかねない」。敢えて総務班の若手を活用してという前部長の思いを話しても詮無い限りだ。そうだ、この人は筋を重んじて判断する人であった。迂闊にもそこに想いが至らず自分の都合の良い情報だけで了解を得られるものと独りよがりに考えていた。
 かくして、事例集の素案は査定チームの担当へと引き渡されることとなった。彼らが年間を通じて最も繁忙となる時期を控えての私からの引き継ぎに、もっと早い余裕のある時期に繋いでくれればなあ…と恨み節を聞かされる。そもそも法令等の義務づけのない任意で作成する事例集なので忙しい査定チームにおいて優先度はどんどん劣後となっていく。結局、私やワーキングチームメンバーが3か月ほど下作業に費やした「飲食を伴う会合の適切な執行のための事例集」は、陽の目を見ることの無いままで終わったのだ。大いなる無駄作業となる前に早めに新部長に方針伺いをしておけば良かった。
 それでも、ワーキングのメンバーはほぼ全部局の総務担当者から構成されていたので、「事例集の素案データ」は実務的には全庁的に共有された状態になっていた。各部局の総務担当者は事業担当から飲食を伴う会合について個別具体の相談を受けた時の助言の参考として「事例集の素案データ」を活用することもままあったと漏れ聞く。徒労感が薄まるせめてもの救いだった。

(「財政課4「特命1「会合ガイドブック」(その2)」編」終わり。「財政課5「特命2「決算審査の早期化」(その1)」編」に続きます。)
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